著者
祝 方悦
出版者
大阪市立大学社会学研究会
雑誌
市大社会学 (ISSN:13458019)
巻号頁・発行日
no.12, pp.45-63, 2011

1 はじめに : 近年, インターネットの発展とともに, 日本のポピュラー文化のさらなる中国への伝播・浸透が加速され, 若者たちに人気を集めている. この現象は, 1980年代に中国大陸に輸入された日本アニメと1990年代に現れた「哈日族」から与えられた影響の延長であると指摘できる. ここでは, より明確に区別をつけるため, 2000年以降に現れた日本ポピュラー文化のファンのことを「日本ポピュラー文化愛好者」と呼ぶことにしよう. 一方, 2000年以降にアニメ・ドラマ・漫画・音楽など, あらゆる「インターネット資源」と呼ばれるコンテンツが急速に需要されるようになり, とりわけ「動漫族」というファン層が中心となるブームが生じている. 本研究においては, 「動漫族」(dong man zu)を, 「90年代に日本アニメが中国のアニメ市場を席巻した頃から, 日本のアニメ・漫画に強い関心を持ち, あらゆるルートにおいてこれらの情報収集することに夢中になる若者」と定義する. 彼らが日本ポピュラー文化へ積極的にアプローチする手段と, これまでのファン層 : 「哈日族」(ha ri zu)時代の受容ルートの変化から, 「動漫族」の受容態度に変化が生じてきたのではないか, という仮説を提示し, 日本ポピュラー文化の中国における伝播の歴史を踏まえながら, それらを明らかにするのが本論の目的である.