著者
中嶋 晋平
出版者
大阪市立大学社会学研究会
雑誌
市大社会学 (ISSN:13458019)
巻号頁・発行日
no.13, pp.19-34, 2012

l はじめに : 第一次世界大戦以降における戦争の総力戦化に伴い, 各国は自国民の積極的な戦争参加を促すため, 広報・宣伝に関する調査研究および制度化を進めていく. 第一次世界大戦において本格的な総力戦を体験しなかった日本も例外ではなく, 1920(大正9)年に陸軍省が新聞班を設置したほか, 海軍や外務省などでも, 海軍省軍事普及委員会や外務省情報部といった, 広報・宣伝活動を担う組織の整備を進めていった. ……
著者
植田 千晶
出版者
大阪市立大学社会学研究会
雑誌
市大社会学 (ISSN:13458019)
巻号頁・発行日
no.12, pp.65-86, 2011

1 問題設定 : 韓国系キリスト教会とは,1970年代以降に韓国から開拓伝道のためやってきたプロテスタント教会(秀村 1999)のことである(以下、韓国系教会とする).日本のキリスト教宗派には属さず,韓国の教会と本部―支部関係を持ちながら活動を行い(櫻井・三木編 2007:175),1980年代以降,増加の一途をたどっている(李賢京 2008).……
著者
招 筱媛
出版者
大阪市立大学社会学研究会
雑誌
市大社会学 (ISSN:24329045)
巻号頁・発行日
no.15, pp.76-81, 2018-03-31

情報技術の発達とともに, われわれを取り巻くメディア環境はかつてない大きな変化が起こっている. 街頭から電車の中までスクリーンが遍在するようになり, スマートフォン, タブレットの普及によって, もはや我々はラジオ, テレビの前に座らなくなり, 掌の上でいつでもどこでも情報が手に入るようになった. こうした状況のなかで, 「オーディエンス」という概念自体が曖昧になっている. 評者は, 新たなメディア形式の1つである弾幕動画1)のオーディエンスに興味を抱き, その研究を進めている. 弾幕動画と現実空間のメディア・イベント, 弾幕動画のオーディエンスとメディア・イベントの参加者, ネット社会のコミュニケーションと現実社会のコミュニケーション, そのような関係を対比的に考えながら, 本書を読んだ. 本書はメディア研究の社会学理論を踏まえた上で, この数年間に流行した, あるいは今も流行するメディア・イベントの具体例を通して議論を展開している. テーマは音楽フェスからジン(zine)まで様々あるが, すべては「日常生活の時間の流れから相対的に切断された次元に成立するイベント」であり, 「参加者のあいだに連帯の感情が共有されているかのような, 一時的で, 仮説的な体験」である. 挙げられた事例は比較的新しく, 学術的書類がほとんどないため, 本書は社会学の理論で現代の事象を解読する斬新な視点を提示する貴重な一冊になるだろう. ……
著者
祝 方悦
出版者
大阪市立大学社会学研究会
雑誌
市大社会学 (ISSN:13458019)
巻号頁・発行日
no.12, pp.45-63, 2011

1 はじめに : 近年, インターネットの発展とともに, 日本のポピュラー文化のさらなる中国への伝播・浸透が加速され, 若者たちに人気を集めている. この現象は, 1980年代に中国大陸に輸入された日本アニメと1990年代に現れた「哈日族」から与えられた影響の延長であると指摘できる. ここでは, より明確に区別をつけるため, 2000年以降に現れた日本ポピュラー文化のファンのことを「日本ポピュラー文化愛好者」と呼ぶことにしよう. 一方, 2000年以降にアニメ・ドラマ・漫画・音楽など, あらゆる「インターネット資源」と呼ばれるコンテンツが急速に需要されるようになり, とりわけ「動漫族」というファン層が中心となるブームが生じている. 本研究においては, 「動漫族」(dong man zu)を, 「90年代に日本アニメが中国のアニメ市場を席巻した頃から, 日本のアニメ・漫画に強い関心を持ち, あらゆるルートにおいてこれらの情報収集することに夢中になる若者」と定義する. 彼らが日本ポピュラー文化へ積極的にアプローチする手段と, これまでのファン層 : 「哈日族」(ha ri zu)時代の受容ルートの変化から, 「動漫族」の受容態度に変化が生じてきたのではないか, という仮説を提示し, 日本ポピュラー文化の中国における伝播の歴史を踏まえながら, それらを明らかにするのが本論の目的である.
著者
澤井 久実
出版者
大阪市立大学社会学研究会
雑誌
市大社会学 (ISSN:24329045)
巻号頁・発行日
no.14, pp.94-98, 2017-03-30

釜ヶ崎を研究したいと大学院の門を叩いて以降, フィールドワークと並行して, それに準ずる貧困問題, 都市問題, ホームレス問題, 支援者と現場の関わりおよび居場所論など様々な書籍に当たってきた. そのなかで, 度々目にする著者の名前. 著者は, 2000年より釜ヶ崎地域の研究を継続してきており, 当該地域研究者のなかでは中堅の代表格の一人といえる. ……