著者
神永 博子 臼井 俊博 四宮 達郎
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.111, no.1, pp.21-26, 2001-01-20 (Released:2014-12-27)

ストレスは生体に様々な影響を及ぼすことが知られている.毛髪についても,ストレスで脱毛などの影響を受けることが経験的に知られているが,学術的な研究報告はほとんど見受けられない.そこで,ストレスが被毛成長に及ぼす影響についてモルモットを用いて検討を行った.その結果,ストレスは肉眼的に被毛成長を低下させると共に,毛長,毛径の有意な低下を引き起こすことが明らかになった.加えて,ストレスを受けた動物の成長毛は筋状の模様が形成され,被毛の質的な変化も引き起こすことが確認された.また,被毛成長と関連があるといわれているγ-glutamyl transpeptidase活性,skin sulfhydryl oxidase活性,alkaline phosphatase活性に有意な低下が観察され,ストレスは生化学的にも被毛成長に影響を及ぼしていることが明らかになった.これらのことから,ストレスは被毛成長に抑制的影響を及ぼしていることが示唆された.
著者
神永 博子 四宮 達郎
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.107, no.5, pp.615, 1997 (Released:2014-08-13)

ストレスは生体に様々な影響を及ぼすといわれているが,皮膚科学領域での学術的な知見はほとんど得られていないのが現状である.そこで,ストレスが及ぼす影響を血液生化学検査,皮膚抽出成分の測定,皮膚色測定,皮膚組織学的検索の観点から検討した.血液成分ではコレステロール,アルカリフォスファターゼ活性などに変動がみられ,ストレスは全身的な影響を示すことが確認された.また,皮膚抽出成分においてもアルカリフォスファターゼ活性などに変動がみられた.皮膚色はストレスにより,明度L*値,黄色味b*値の上昇,赤味a*値,彩度C*値の低下が観察された.組織学的検討として,表皮DOPA染色によるメラノサイトの観察を行ったところ,ストレスで増加傾向を示し,メラノジェネシスが亢進している可能性が示された.また,表皮のATPase染色によるランゲルハンス細胞の観察を行ったところ,ストレスで減少傾向を示し,皮膚の免疫能が低下している可能性が示された.以上より,ストレスは皮膚そのものに対しても様々な影響を及ぼしていることが明らかとなった.