著者
神田 陽一
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

装置の小型化や光学デバイスのために、薄膜電極が用いられる。特に光学用途には、インジウム等のレアアースを用いて真空プロセスで作成されるのが主流である。しかしプロセスコストや資源枯渇の問題から、薄膜電極の新しい構造および製造法の開発が望まれている。本研究のねらいは、均一薄膜に代わり、微細気泡を利用することにより、気泡間に存在する液膜を利用して、透明な細線網目構造電極を開発することである。すなわち気泡が形成する六角構造の薄い液膜部を金属ナノ粒子ゾルとし、バルク伝導が可能な細線を形成するとともに、気泡部分の光透過性により、透明な導電膜を形成することである。気液二相をマイクロキャピラリー中で混合し、バルク流路に放出すると、一般には球状や六角状の気泡が形成し、流速の低下と相まって規則的に配列する。このバルク流路をガラス基板で作成しておけば、気泡が規則的にガラス基板上に配列する。本年度は、マイクロ流路法で気泡の生成条件を明らかにし、気泡径が流速にのみ依存すること、ガス流の剪断力が液滴形成のタイミングを決定すること等が明らかになった。気液比が理論限界値1:9を超えても、セル圧入時にガスが圧縮されるため気泡生成が可能で、その場合は最初から六方構造の気泡が生成する可能性があることがわかった。しかし、安定な気泡形成には、低めのガス量で操作することが望ましい。この場合、気泡形成後に減圧することにより徐々に気液比を上昇させ、安定な六方構造を形成することが可能である。金ナノ粒子を混合して、上記と同様の操作を行った。生成したネットワーク構造を凍結乾燥し、焼成したところ、導電性を確認した(光透過率60%)。なお、減圧により六方構造の形成を試みたものは、光透過率は80%以上を確保したが、導電性は認められなかった。これは絶対的な金量の不足に起因する。