著者
伊藤 公孝 居田 克巳 杉田 暁 神谷 健作 佐々木 真 伊藤 早苗
出版者
中部大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2016-04-01

昨年度までに、バリア構造のモデルを開拓し、乱流輸送の抑制の検証法を構想した。そして、電場形成・遷移および乱流抑制の実験検証を進めた。また、電場曲率効果について、当初定式化した機構だけではなく、独立な機構の重要な働きも見出した。計画は極めて順調に進展し、予想以上の広がりが実現している。非線形構造である振動型の帯状流によって、乱流塊が捕捉され輸送障壁内に侵入する現象も解析し、輸送障壁内部での揺動の起源の一つとして定式化した。さらに何十年も未解明だった問題(装置容器の材料や給気法が主プラズマの閉じ込めに影響する実験事実)にも研究を拡張した。かねてより代表者らは閉じ込め装置の壁材がH-モードの閉じ込め改善度に影響する上で中性粒子の役割を指摘してきた。その考えを拡張し、粒子補給によって生み出される乱流揺動を解析した。その結果、粒子補給量がプラズマ閉じ込めに影響すること、この機構が生成されたH-モードをより安定状態ならしめることなどを見出した。別の未解明問題としては、H-モード遷移の閾値より低い入力状態でプラズマ中央部での崩壊現象が起きると、それに付随してH-モード遷移が起きるという実験観測が30数年知られて居る。従来は、崩壊現象による熱パルスが「不足していた」パワーを補うことが原因だろうと考えられていたが、大型装置での実験の詳細分析の結果、乱流塊と急峻な径電場の伝播が遷移を引き起こして居ることを実証した。こうした改善閉じ込め現象などに関する成果は、何十年来知られていた未解明問題に取り組む新たな糸口となると期待される。さらには、乱流がプラズマ中のプラズマ断面の一部分に乱流が局在すること(H-モードに重要な働きを持つ可能性を代表者らが理論的に指摘している)のレビューを出版し、今後の研究者への指針を与えた。