著者
内海 潤 神谷 直慈
出版者
日本小児血液・がん学会
雑誌
日本小児血液・がん学会雑誌 (ISSN:2187011X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.254-260, 2018 (Released:2018-10-27)
参考文献数
11

我が国では現在,「産」(企業)と「学」(アカデミア)が連携して国産の医薬品や医療機器の研究開発を進める活動が,かつてないほどに盛んになってきている.「官」(国)がファンディングし,産学官連携という形になることも多い.医療製品が実用化される際に必須の2つの行政的な手続きがある.それは薬事承認の取得と知的財産権の確保である.すなわち,医療製品を製造販売しようとする者は,製品を知的財産権(主に特許権)で競合他者から守り,国の薬事審査の承認を得て,事業化ができるのである.医薬品や医療機器などの医療製品は,製造販売を行うのは企業で,ユーザーは医療従事者と患者であるが,その研究開発・性能験評価の過程からアカデミア及び医療機関の関与が必須である.それゆえ,円滑な研究開発を進めるうえでは,医療製品の研究開発に係る産学関係者が,知的財産に係る仕組みと特徴を知ることが極めて重要である.ただし,医薬品と医療機器では,特許の価値と取扱いも異なっており,留意が必要である.本稿では,医薬品と医療機器の研究開発における産学連携の意義と仕組みと知的財産の係わりについてまとめた.さらに,従来は産学連携の取組みが少なかった小児科領域における国の施策についても言及した.