著者
神長 達郎
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.1-6, 2006-01-25 (Released:2011-03-02)
参考文献数
18
被引用文献数
2 1

fMRI (functional MRI) は, 人における脳機能局在を研究する手段として, 中心的な地位を占める. fMRIは100mmのオーダーの空間分解能と, 数秒程度の時間分解能とを持ち, 脳内部位の認識が容易であるという特徴を持つ. また, ほぼ大脳および小脳全体の計測が可能である. 時間分解能を補うためには, 時間分解能に優れた脳機能局在研究手段である, EEG (Erectroencepharogram) やNIRS (Near-Infrared Spectroscopy) との並列, または同時施行が有用である. fMRIは臨床MRI機でも施行可能であるが, fMRIを適切に計画および実行し, さらに得られた結果を正しく解釈するには, 一定の知識が必要である. また, 結果は別の手段により検証されることが望ましい. fMRIで重要な事のひとつはタスクのデザインである. タスクの形式は大きく分けて Block design と Event related design があり, それぞれに利点, 欠点がある. コントロールタスクの選択, タスクの提示順番や回数などにも検討が必要である. 被験者や患者の安全を守るという点では, 強い静磁場に入れてはならない被験者があり, 熟知しておく必要がある. 得られた結果の解析には, 複雑な数学的過程が必要であり, SPM (Statistical Parametric Mapping) などがこれを担っている. SPMは複雑な機能を備えたソフトウェアであるが, fMRIの結果解析にはこれの理解が必要である. このように, fMRIは多様な知識を必要とするため, その運用は集学的なチームによってなされる事が望ましい. 適切に運用すれば, fMRIは多くの可能性を秘めた手段であると考えられる.