著者
中田 信昭 祷 史明 中村 夫左央 針原 重義 平山 幸雄 鈴木 陽 下内 昭 高鳥毛 敏雄
出版者
JAPANESE SOCIETY FOR TUBERCULOSIS
雑誌
結核 (ISSN:00229776)
巻号頁・発行日
vol.82, no.5, pp.455-458, 2007-05-15
被引用文献数
3

〔目的〕大阪社会医療センターは結核高罹患地域であるあいりん地域に位置し,日雇い労働者や野宿生活者を主な対象とする無料低額診療施設である。地域にある当院の外来受診者について結核検診を行い,結核有病状況を明らかにし,地域における役割を検討することを目的とした。〔対象と方法〕平成17年3月31日から18年6月15日に整形外科単科外来初診患者1,673人中検診同意者(検診受検群)538人(男性523人,女性15人)について胸部エックス線検査を行った。また同時期の内科受診者2,000人(内科受診群)を対照として分析した。〔結果〕検診受検群については要医療率2.4%(13人)であった。一方,内科受診群2,000人については要医療率4.3%(85人)であった。〔結論〕検診受検群の結核患者発見率2.4%は,平成16年度のあいりん地域での結核検診における患者発見率1.1~1 .8%とほぼ同水準,対照群のそれは約2倍高率であった。これらの結果から,結核蔓延地域にある当院には,受診者に対し結核検診をルーチン業務とするとともに,発見患者に対する精密検査および外来診療を行えるよう基盤整備を行い,行政,専門機関の支援を得て,この地域の結核対策に取り組んでいく必要があると考えられた。