著者
福井 宣規 錦見 昭彦 實松 史幸
出版者
九州大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2007

樹状細胞は、形態、表面マーカー、機能から形質細胞様樹状細胞(pDC)と骨髄型樹状細胞(mDC)の2つに大別される。mDCは抗原を捕捉しT細胞に提示することで、獲得免疫の始動に重要な役割を演じている。一方pDCは、TLR7/TLR9を介して核酸リガンドを認識し、大量のI型インターフェロンを産生すると言う点で、近年注目を集めている細胞であるが、その活性化機構の詳細が十分に解明されているとは言い難い。Atg5の欠損マウスではpDCの活性化が障害されることから、オートファジーがなんらかの形でこの活性化に関わる可能性がある。また、TLR7/9は未刺激の状態ではERに存在するが、ERを移出後TLR7/9は限定分解をうけることが最近報告された。それ故、このタンパク分解がTLR7/9の活性化に関わっている可能性も考えられる。このため、本年度はpDCの活性化におけるオートファジーとTLR9の限定分解につき解析を行った。このため、LC3トランスジェニックマウスの骨髄からpDCを分化させ、レトロウイルスベクターを用いてYFPを融合したTLR9を発現させた後、Cy5でラベルしたCpGを取り込ませたところ、TLRとCpGが刺激後6時間でLC3ポジティブのドットと共局在することを見出した。しかしながら、生化学および電顕を用いた解析からCpG刺激によるオートファジー亢進の所見は得られなかった。一方、TLR9の限定分解についてもレトロウイルスベクターを用いた強制発現系で解析したが、CpG刺激の如何に関わらずN端を欠失したTLR9が認められることから、この限定分解がTLR9の活性化と直接リンクしているという証拠は得られなかった。