著者
福井 貴也 高橋 明彦
出版者
東京大学大学院経済学研究科
雑誌
経済学論集 (ISSN:00229768)
巻号頁・発行日
vol.82, no.1, pp.2-40, 2017-07-01 (Released:2019-04-22)
参考文献数
15

本稿では,ニューラルネットワークを用いた深層学習に基づく投資手法を考察する.特に,損失関数の特定化により様々な投資手法を構築できることに着目し,その例として,資産リターン(収益率)の時系列を入力し,教師付き深層学習(Supervised Deep Learning, SL)によるアノマリー検出を投資判断に活用する手法と,収益最大化に基づく投資判断を深層強化学習(Deep Reinforcement Learning, RL)により求める方法を示す.また,各資産のリターンに関する学習結果を,複数資産を対象とするポートフォリオ運用についても活用する.さらに,現実の市場データを用いた検証を行い,対象資産が同じであっても,月次/日次リターン等の入力データの種類,学習手法の選択,投資期間中の再学習の有無,ネットワークの層数,中間層のユニット数等の外生的に設定する項目により投資パフォーマンスが大きく異なることを例示する.なかでも,RLに基づく投資判断が,ポートフォリオ運用において相対的には安定して良好なパフォーマンスを示すことが明らかとなる.