著者
藤谷 秀雄 福住 忠裕 崔 宰赫
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

制振ダンパーとして、履歴型ダンパーと粘性型ダンパーを研究対象とした。平成17年度の各種ダンパーの単体載荷実験から得られた、制振ダンパーの必要なエネルギ散逸特性や特定した数学モデルに基づき、平成18年度は、履歴ダンパーで連結された連結制振構造物の必要なエネルギ散逸特性や接続された構造物群の制振効果を確認するため、エネルギ散逸要素に対する載荷実験をオンラインで結合した地震応答実験によって行った。まず、低降伏点鋼を用いたせん断パネル型履歴ダンパーについて、パネル部の厚さが薄い場合,パネル部の面外座屈による局所的な耐力低下が全体連結構造物に及ぼす影響を調べ、その影響が少ない既存のスケルトン・シフトモデルを用いた応答解析結果を準用することが出来ることが判明した。また、梁間方向の伸縮と上下動、桁行き方向の水平変位に対して履歴減衰を付加することが可能な多方向ダンパー(鋼管ダンパー)を製作し、地震時の挙動を調べた。鋼管ダンパーの形状の特性によって、鋼管ダンパーの亀裂進展による耐力低下は入力振幅の大きさ及び入力波形によって極めて大きく変動することを示し、等価単調載荷曲線を用いてスケルトン・シフトモデルの適用範囲を提案した。そして摩擦ダンパーについて、連結制振部材としての適用可能性を検討した。せん断型摩擦ダンパーを完全弾塑性モデルでモデル化して地震時の応答挙動を制度良く追跡できることを示し、卓越する変位低減効果を有することが明らかになった。更に、上のいずれの履歴型ダンパーに対しても、連結制振性能曲線を作成し、これからの連結制振構造物の設計時に有効な指標(ダンパーの剛性と耐力)や制振効果の予測に関する情報を確認した。粘性型ダンパーについては、オイルダンパーと粘弾性ダンパーを適用し、17年度に実施した単体特性試験の結果から得られたダンパーのモデルを用いて、地震応答解析を実施した。17年度は、構造モデルは弾性であったが、より現実の建築物への適用性を高めるために、弾塑性系の構造物、および多質点系の構造物に適用した解析を行った。その結果、新設S造の固有周期が短い(ブレースの設置などによって剛性が高い)場合は、新設S造の質量を既存RC造の0.25倍以上となるようにし、既存RC造の重量1000kNあたり、粘性減衰係数C_d=5〜20kNs/cm程度のオイルダンパー、または等価粘性減衰係数C_<dVE>=8.5kNs/cm以上の粘弾性ダンパーを設置すれば、既存RC造の変位を低減できるということが明らかになった。