著者
池田 孝博 青柳 領 福元 文香 福元 芳子
出版者
西九州大学
雑誌
永原学園西九州大学・佐賀短期大学紀要 (ISSN:03875326)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.87-93, 2007-03-01

幼児の運動能力や形態の発育への生活環境・日常行動の関連を検討するため、4歳および5歳の幼稚園児256名を対象に、身長、体重、25m走、立幅跳、目隠し立ち、長座体前屈の6項目を測定し、同時に、スポーツクラブへの所属の有無、運動頻度、運動時問、朝食の有無、睡眠時間、TV視聴時問、預かり保育についてアンケート調査を行った。さらに、日常生活行動などが単独で運動能力に関与するのではなく、お互いが影響し合い、総合的に関与すること、およびアンケート調査項目が離散的データであることから数量化理論I類を用いて関連を検討した。結果は、以下の通りである。(1)身長に関しては、日常生活行動調査項目のレンジは年間発育量のレンジの50%にも満たず、日常生活行動による影響を受けていなかった。(2)系統発生的運動で加齢とともに発達すると考えられる25m走や立幅跳は、1年間の発育発達量を基準としたレンジでも50%以上の値を示す独立変数が少なかった。逆に、体重移動をともなわない運動である長座体前屈は多く、比較的環境や日常の影響を受けていると考えられる。(3)激しい身体移動を含む運動である25m走や立幅跳に男児が優れ、体重移動を含まない目隠し立ちや長座体前屈で女児の方が優れていた。これは、大人社会からの期待に沿ってそれぞれに男性らしい運動遊び、女性らしい運動遊びを経験したことによるものであろう。(4)体重は運動頻度と逆の関連がみられ、同時に朝食の摂取と高い関連を示した。これは、体重の中でも体脂肪量の増加を反映したものと考えられる。