著者
小倉 悠紀 小山 純一 福原 忠雄
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.397-401, 2012-05-05 (Released:2012-06-07)
参考文献数
19
被引用文献数
1 1

肌状態と過酸化脂質との関連を調べるため,Diphenyl-1-pyrenylphosphine(DPPP)を蛍光試薬としフローインジェクション分析(FIA)システムを用いた高感度で迅速なヒト皮脂中の過酸化脂質分析法を開発した.リノール酸メチルにブラックライトを照射してリノール酸メチルヒドロペルオキシド(MLHP)を得て,固相抽出法を用いて精製した後,NMRを用いてMLHPの純度を確認し過酸化脂質標準品とした.FIA分析条件の最適化を行い,確立したシステムの検出限界は0.51 pmol,定量限界は1.1 pmolであり,分析時間は10分であった.さらに,確立した前処理法により作成したろ紙を用いてヒトの微小部分から皮脂を採取し,そのろ紙から皮脂中の過酸化脂質を抽出する方法を開発した.ろ紙を用いたときの定量限界は3.8 pmolであった.開発した方法を用いて24名のヒト皮膚上の皮脂中過酸化脂質を分析し,実際ヒトを用いた試験への適用が可能であることが確認され,個人間の差が大きいことが明らかとなった.