著者
小山 純一 仲西 城太郎 佐藤 純子 野村 純子 鈴木 裕美子 増田 嘉子 中山 靖久
出版者
The Society of Cosmetic Chemists of Japan
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.16-26, 1999-03-20 (Released:2010-08-06)
参考文献数
22
被引用文献数
4 3

健常な人にとっての一般的な皮膚の悩みとして, 皮膚表面に生じる落屑の発生があげられる。冬季の肌荒れによくみられる現象である。形態学的, 生化学的な検討により肌荒れの現象面については解明されてきたが, 落屑の発生メカニズムはまだ明らかでない。本研究では角層の接着, 剥離のメカニズムを明らかにし, どのような因子が影響しているのか, またどのようなスキンケアが有効かを検討した。角層中には2種類のセリン酵素が存在し, それぞれトリプシン様 (30kDa), キモトリプシン様酵素 (25kDa) であることがわかった。遺伝子解析によりキモトリプシン様酵素はすでに報告されている角層中のキモトリプシン様酵素 (SCCE) と一致した。トリプシン様酵素はIV型トリプシノーゲンと新奇なトリプシノーゲンであることがわかった。角層シートは緩衝液中で単一細胞にまで分散するが, 分散した角層からはデスモソームは検出されなかった。逆に熱処理した角層やセリン酵素阻害剤を添加した場合はデスモソームは分解されず, 分散も起こらなかった。ロイペプシンあるいはキモスタチンの単独では抑制効果はアプロチニンの半分でしかなかった。しかし, ロイペプシンとキモスタチンを混合した場合はアプロチニンと同程度の抑制効果がみられた。この結果からデスモソームが角層細胞の接着に大きな役割をはたしており, このデスモソームを2種類のセリン酵素 (トリプシン様, キモトリプシン様) が分解することにより角層細胞が剥離することが明らかになった。加齢によりトリプシン様酵素の活性が低下することが明らかになり, 加齢による角層の肥厚に酵素活性の低下が関与していることが示された。酵素によるデスモソームの分解は角層中の水分に影響されることが明らかになった。冬季の乾燥により角層中の水分が減少しデスモソームの正常な分解が妨げられた結果, 落屑が生じると考えられた。この研究により角層の剥離過程に二つの因子が関係することがわかった。一つは角層中の水分量である。酵素自体は正常であっても角層中の水分量が減少することにより酵素の働きが妨げられる。この場合は保湿剤が有効であった。もう一つは酵素活性そのものの低下であった。この場合にはデスモソームの分解を促進する薬剤が必要であった。ジカルボン酸類がデスモソームの分解を促進しその種の薬剤としての可能性が示唆された。
著者
小倉 悠紀 小山 純一 福原 忠雄
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.397-401, 2012-05-05 (Released:2012-06-07)
参考文献数
19
被引用文献数
1 1

肌状態と過酸化脂質との関連を調べるため,Diphenyl-1-pyrenylphosphine(DPPP)を蛍光試薬としフローインジェクション分析(FIA)システムを用いた高感度で迅速なヒト皮脂中の過酸化脂質分析法を開発した.リノール酸メチルにブラックライトを照射してリノール酸メチルヒドロペルオキシド(MLHP)を得て,固相抽出法を用いて精製した後,NMRを用いてMLHPの純度を確認し過酸化脂質標準品とした.FIA分析条件の最適化を行い,確立したシステムの検出限界は0.51 pmol,定量限界は1.1 pmolであり,分析時間は10分であった.さらに,確立した前処理法により作成したろ紙を用いてヒトの微小部分から皮脂を採取し,そのろ紙から皮脂中の過酸化脂質を抽出する方法を開発した.ろ紙を用いたときの定量限界は3.8 pmolであった.開発した方法を用いて24名のヒト皮膚上の皮脂中過酸化脂質を分析し,実際ヒトを用いた試験への適用が可能であることが確認され,個人間の差が大きいことが明らかとなった.
著者
柴田 隆浩 金 英俊 小山 純一 久保木 孝 村田 眞
出版者
一般社団法人 日本塑性加工学会
雑誌
塑性と加工 (ISSN:00381586)
巻号頁・発行日
vol.53, no.612, pp.64-68, 2012 (Released:2012-01-25)
参考文献数
8
被引用文献数
1

Recently, the adjustment of working conditions in a manufacturing process is indispensable for realizing manufacturing accuracy in the V bending of a sheet metal. This adjustment is called "Trial Processing", and is a factor for lowing productivity. Therefore, "Trial Processing Free", a method that can obtain accuracy within tolerance but without the adjustment, is required. In the V bending of a sheet metal, there are two types of bending process, i.e., (i) air bending and (ii) bottom bending, using two types of punch control, i.e., (a) stroke control and (b) force control. In this research, a series of analysis and experiments were carried out to clarify that (ii) bottom bending with (b) force control is most appropriate for achieving Trial Processing Free. It was also established that bottom bending at an appropriately controlled force can absorb the effect of uncontrollable factors such as the dispersion of thickness and material properties of sheet metals and bend sheets within a certain tolerance, because the bending angle is stable even in a very wide range of bending forces. This bending method with force control was called the "FCSS (Force Control to Sweet Spot) method" and the advantage of this new process was verified experimentally.