著者
香西 克俊 境田 太樹 福士 恵一 石田 廣史 東上床 智彦
出版者
神戸商船大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

TOPEX/POSEIDON衛星高度計データをもとに日本海南部におけるナホトカ号船首部漂流期間を含む1993年1月から1997年12月までの海面高度場を推定した.船首部漂流期間中,漂流期間前と比較して,隠岐諸島北部海域の海面高度は能登半島北部海域より海面高度が約80mm上昇し,その結果,プイ南側に位置する沈没地点付近の等高線間隔が密になり,等高線の向きも南北方向に傾く様子が見られる.この海域の海面勾配は等高線に対して直角方向110kmに対して海面高度差が約140mmあり,これは地衡流速に換算して南南東向き約0.24ノットの流速である.船首部漂流期間終了後,隠岐諸島北部海域の海面高度は能登半島北部海域の海面高度に比較して大きく下降し,その結果,沈没地点付近の等高線間隔は漂流期間中に比べて広がり,等高線の向きも東西方向に傾く様子が見られる.TOPEX/POSEIDON衛星高度計データによる時空間平均海面高度場では捉えきれない空間スケール100km以下の小規模低気圧性渦の存在を地衡流向流速場により明らかにした.そして風速が10m/s以下の期間の漂流軌跡はこの低気圧性渦による南東流の影響を強く受けている可能性を示唆した.ERS-2搭載高度計データをもとにナホトカ号沈没船体からの漂流重油を追跡した結果、軌道に沿った推定表層地衡流量は沈没船体からの漂流重油の海面における湧出点位置に大きな影響を与えていることが確認された。特に推定表層流向は沈没位置に関する湧出点位置の方位角とほぼ一致し、また推定表層流量が大きくなればなるほど重油湧出点位置は沈没位置から離れることが明らかになった。