著者
塩谷 茂明 藤富 信之 斎藤 勝彦 石田 廣史 山里 重将
出版者
日本水産工学会
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.123-134, 1996 (Released:2011-07-07)

船舶工学の分野では、船体設計の観点から各種の抵抗軽減に関する様々な研究が行われ、造波問題を対象とした研究も発展してきた。そこでは、船舶による造波の情報は船体の極く近傍に限られ、船体から伝播する波は研究の対象外でほとんど関心がなかった。しかも、このような造波問題の研究はほとんどが模型船レベルであり、船体抵抗の推定が目的である。そのため厳密かつ高精度な船側波形や船体周り粘性流場の情報が要求されるので、船体近傍の波紋計算は複雑で容易ではない。また、研究対象が巨大船を含む比較的大型の船舶であるため漁船、高速艇ならびに滑走艇のような小型船舶による航走波の研究が十分行われていないのが現状である。一方、水産工学の分野では、航行船の造波問題は養殖筏や係留中の小型船舶の損傷、小型釣船の大動揺による転覆や、釣り客の海中落下等の人身事故誘発の危険性等に深く関わるため、航走波の研究が重要である。しかも、このような筏を代表とする養殖施設は大型船が航行する主要航路周辺より、湾内や入り江等に点在することが多い。したがって、大型船舶による航走波の影響をほとんど受けないと考えてよい。むしろ、漁船、モーターボートを含む滑走艇や、離島間就航の高速艇等の小型船舶は航路外の海域を、比較的自由に航行することが可能である。そのため、時には養殖施設の極く近辺を航走することがあり、かえって大型船舶による航走波より大被害を誘発する危険性がある。
著者
塩谷 茂明 藤富 信之 斎藤 勝彦 石田 廣史 山里 重将
出版者
日本水産工学会
雑誌
日本水産工学会誌 (ISSN:09167617)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.123-134, 1996
被引用文献数
6

船舶工学の分野では、船体設計の観点から各種の抵抗軽減に関する様々な研究が行われ、造波問題を対象とした研究も発展してきた。そこでは、船舶による造波の情報は船体の極く近傍に限られ、船体から伝播する波は研究の対象外でほとんど関心がなかった。しかも、このような造波問題の研究はほとんどが模型船レベルであり、船体抵抗の推定が目的である。そのため厳密かつ高精度な船側波形や船体周り粘性流場の情報が要求されるので、船体近傍の波紋計算は複雑で容易ではない。また、研究対象が巨大船を含む比較的大型の船舶であるため漁船、高速艇ならびに滑走艇のような小型船舶による航走波の研究が十分行われていないのが現状である。一方、水産工学の分野では、航行船の造波問題は養殖筏や係留中の小型船舶の損傷、小型釣船の大動揺による転覆や、釣り客の海中落下等の人身事故誘発の危険性等に深く関わるため、航走波の研究が重要である。しかも、このような筏を代表とする養殖施設は大型船が航行する主要航路周辺より、湾内や入り江等に点在することが多い。したがって、大型船舶による航走波の影響をほとんど受けないと考えてよい。むしろ、漁船、モーターボートを含む滑走艇や、離島間就航の高速艇等の小型船舶は航路外の海域を、比較的自由に航行することが可能である。そのため、時には養殖施設の極く近辺を航走することがあり、かえって大型船舶による航走波より大被害を誘発する危険性がある。
著者
大澤 輝夫 石田 廣史
出版者
公益社団法人 日本航海学会
雑誌
日本航海学会論文集 (ISSN:03887405)
巻号頁・発行日
vol.113, pp.267-273, 2005
参考文献数
10
被引用文献数
3 3

Meteorological factors of the maritime casualty of Ferry Muroto occurred on July 27, 1999 are investigated through the comprehensive analysis of meteorological observation data and results of the numerical simulation with a mesoscale model. From the analysis, it is found that 1) the wind of Typhoon 9905 was the strongest near the Shikoku Island bescause of the pressure gradient intensified between the typhoon and the North Pacific High, and 2) the maritime casualty occurred just when the spiral rain band was passing over the accident site. The results of this study indicate that a maritime casualty can occur even outside of the radius of 15m/s wind speed of a typhoon and that navigators and operation supervisors have to take account of the locally-intensified wind area around the typhoon and the passage of the spiral rain band, which might cause severe weather conditions.
著者
香西 克俊 境田 太樹 福士 恵一 石田 廣史 東上床 智彦
出版者
神戸商船大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

TOPEX/POSEIDON衛星高度計データをもとに日本海南部におけるナホトカ号船首部漂流期間を含む1993年1月から1997年12月までの海面高度場を推定した.船首部漂流期間中,漂流期間前と比較して,隠岐諸島北部海域の海面高度は能登半島北部海域より海面高度が約80mm上昇し,その結果,プイ南側に位置する沈没地点付近の等高線間隔が密になり,等高線の向きも南北方向に傾く様子が見られる.この海域の海面勾配は等高線に対して直角方向110kmに対して海面高度差が約140mmあり,これは地衡流速に換算して南南東向き約0.24ノットの流速である.船首部漂流期間終了後,隠岐諸島北部海域の海面高度は能登半島北部海域の海面高度に比較して大きく下降し,その結果,沈没地点付近の等高線間隔は漂流期間中に比べて広がり,等高線の向きも東西方向に傾く様子が見られる.TOPEX/POSEIDON衛星高度計データによる時空間平均海面高度場では捉えきれない空間スケール100km以下の小規模低気圧性渦の存在を地衡流向流速場により明らかにした.そして風速が10m/s以下の期間の漂流軌跡はこの低気圧性渦による南東流の影響を強く受けている可能性を示唆した.ERS-2搭載高度計データをもとにナホトカ号沈没船体からの漂流重油を追跡した結果、軌道に沿った推定表層地衡流量は沈没船体からの漂流重油の海面における湧出点位置に大きな影響を与えていることが確認された。特に推定表層流向は沈没位置に関する湧出点位置の方位角とほぼ一致し、また推定表層流量が大きくなればなるほど重油湧出点位置は沈没位置から離れることが明らかになった。