著者
渡邊 祐子 藤井 仁美 宮川 高一 福山 次郎
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.341-346, 2008 (Released:2009-05-20)
参考文献数
18
被引用文献数
2

本邦での高浸透圧高血糖症候群(HHS)と糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)の合併例の報告は少ない.われわれの経験した5症例は,平均年齢43.6歳,随時血糖1,800 mg/dl, HbA1c 13.4%, 血清浸透圧419 mOsm/kgH2O, 補正後血清ナトリウム値164 mEq/lであったが,意識障害の程度は比較的軽く,全例pH 7.00∼7.24の中等度DKAを合併していた.経過中,横紋筋融解症,stress-induced cardiomyopathy, 急性腎不全,腎膿瘍,肺梗塞症,カンジダ症など多彩な合併症を発症し,全例ICU管理を要したが後遺症なく退院した.退院時治療はインスリン1例,経口薬2例であった.発症誘因は,感冒または清涼飲料水多飲であった.2例は統合失調症であり,糖尿病の既往のある3例中2例が放置例であった.HHSとDKAの合併例は,発症年齢が比較的若く生命予後は良好であるが,多岐にわたる重篤な全身合併症が出現し,多くの人的物的医療資源を要する.若年肥満者や清涼飲料水消費の増加に伴い今後増加が予測され,高リスク群への介入および治療中断予防が重要と考える.