著者
福岡 安都子
出版者
東京大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2011

本研究課題は、主権理論、また信教や思想の自由が歴史上どのように発展したのかを、その重要な舞台をなす17世紀のオランダにつき、特に、国家と教会の関係という当時の同国最大の政治問題に焦点を当てて分析することを試みたものである。聖書からの引用を多用しそこに複雑な解釈を施すという当時の議論スタイルと正面から取り組むことを通じ、「聖書世界において啓示を媒介するのは誰で、それはどのようにであったか、また今日において対応する役割を負うのは誰か」という一連の「啓示の媒介者の問い」が、グロティウスを中心とする1600~1620年のいわゆる「レモンストラント論争」時の理論家に、主権の限界及び教会の自律性を巡って見解が対立する際のまさに分岐点として意識されていたことが明らかとなった。これにより、その後のホッブズやスピノザの世代との議論枠組の連続性が改めて確認された。