著者
福島 みどり
出版者
和光大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、話しことば資料を中心に、小説・新聞・広告などの書きことば資料も加え、広く他動文の用例を収集し、逸脱的特徴を持つ(1)接続助詞的なヲの文(2)状況を表すヲの文(3)とがめだてを表す「何ヲ」文(4)(3)と似た意味を表す逸脱的な「何ガ」文について考察した。その結果、それらの文の意味解釈には、同じ形式を持つ他動文のうちのあるタイプをベースとした類推が働き、ベース構文の意味を写像して創造的に変容解釈・補充解釈を行うことにより成り立つことを主張した。特にAガBヲVという形式を持つ他動文について、(1)~(3)の逸脱的特徴を持つ他動文がベースとする他動構文は、他動構文の中でも、使用頻度が十分であり、また、典型的他動性の意味を持つタイプの構文であることを主張し、実際の言語使用において構文が重要な役割を果たすことを示した。