著者
福島 光浩 太田 寿 小田 瞳 伊藤 康弘 宮内 昭
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.27-30, 2017 (Released:2017-04-28)
参考文献数
9

われわれは低リスク甲状腺微小乳頭癌に対し,すぐに手術をせずに経過観察を行ってもほとんどの症例では全く問題がなく,また仮に経過観察中に腫瘍増大やリンパ節転移を認めたことにより途中で手術療法に切り替えたとしても,それらの手術後の予後もまた良好であったことを報告した。経過観察を選択した症例で,超音波所見と臨床病理学的背景から,後に手術が必要となること,もしくはずっと経過観察が可能であることを予測するための因子として以下の所見があげられる。腫瘍が増大せず経過観察継続可能な因子は①アコースティックシャドーを伴う粗大高エコー輝点,②初診時年齢高齢,③微細高エコー輝点,の3つ。一方,リンパ節転移が出現せず経過観察継続可能な因子は微細高エコー輝点,逆にリンパ節転移が出現し手術が必要となる因子は初診時年齢若年があげられる。
著者
福島 光浩
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.64-67, 2019 (Released:2019-10-03)
参考文献数
4

甲状腺・副甲状腺疾患の手術後に起きる術後出血は,約1~2%に起きると報告されており,初期対応を誤ると深刻な事態を招く術後合併症である。頸部は比較的狭いコンパートメントのため切開創が縫合された後に起きる出血はコンパートメント内の圧力を急激に上昇させ気道閉塞を引き起こす原因となる。医療安全調査機構の警鐘事例に甲状腺の手術後に起きた術後出血により不幸な転帰をたどった事例が報告されている。その報告をもとに甲状腺・副甲状腺疾患の手術後に起きる術後出血の注意点を改めて検証する。事例の概要は以下の通りである。40歳代 男性 バセドウ病と診断され甲状腺亜全摘術を施行。手術約12時間後に術後出血から心肺停止となり,いったん蘇生するが約1カ月後,腎不全,肺炎,心外膜炎を併発し死亡した。(医療安全調査機構の評価結果報告書概要 平成24年度 事例132より抜粋)
著者
宮内 昭 工藤 工 都島 由希子 宮 章博 小林 薫 伊藤 康弘 高村 勇貴 木原 実 東山 卓也 福島 光浩 藪田 智範 舛岡 裕雄 進藤 久和 山田 理 中山 彩子
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.13-17, 2013 (Released:2013-05-31)
参考文献数
10
被引用文献数
1

現在,甲状腺乳頭癌に対しては,腫瘍径,Ex,N,Mの評価に基づいて手術術式が選択され,術後は病理学的所見や術後の血清サイログロブリン(Tg)値に基づき,術後療法が選択されている。本論文では,Tg抗体(TgAb)陰性の乳頭癌においては甲状腺全摘後のTSH抑制下のTg値の変動から求めたTgダブリングタイム(TgDT)が多変量解析において最強の予後因子であることを紹介する。Tg値の変動が重要である。しかし,TgAb陽性患者においてはTg値の信頼性は低い。そこで,TgAb陽性の乳頭癌225症例の甲状腺全摘後のTgAb値の変動と予後との関係を調べると,術後2年以内に50%以上低下した症例は非低下症例より有意に良好であり,多変量解析において優れた予後因子であることが判明した。今後は,旧来のTNM,病理学的分化度による予後予測の時代から,血清Tg,TgAb値の経時的変動分析に基づく動的予後予測の時代へとパラダイムシフトが起こるものと予想される。