著者
福島 甫
出版者
東海大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2009

本研究申請時に比べ物質輸送モデルの研究が進み、黄砂降下量が一定精度で推定できるようになったこと、また衛星データが蓄積され、「年々変動の解析」がやりやすくなったことを勘案し、研究の重点を「鉄供給源と見なされている黄砂の沈着量と植物プランクトン量(衛星によるクロロフィル濃度推定値)」の関係の解析に移した。併せて東アジア域における大気汚染に関連する指標として、過去12年間にわたる日本近海におけるサブミクロン粒子の増減傾向に関する衛星データ解析を行った。(1)北太平洋における黄砂沈着量分布とクロロフィル濃度の関係に関する解析九大・竹村俊彦らのエアロゾル放射伝達モデルSPRINTARSによる最近13年間の北太平洋黄砂沈着量データと、MODIS・SeaWiFSデータによるクロロフィル濃度データの比較解析を北緯20~69°における北太平洋域の各小海域(緯度・経度各4°幅)について行った。黄砂沈着量とクロロフィル濃度については月間平均値・週間平均値(1・2週間の時間遅れ含む)どうしの直接的な相関を見いだすことはできず、年度内に成果としてまとめることはできなかった。しかし解析を通じて新たな着想が得られたので、引き続き解析を続ける予定である。(2)日本近海における小粒径エアロゾル増加傾向の解析1998~2009の期間の日本近海におけるSeaWiFSデータの独自再解析を行い、Aqua/MODISデータと重複する期間については両者の解析結果がよく一致すること、さらにこの間の小粒径粒子の割合が2006年頃を境に増加から減少に転じることを確認した。SPRINTARSによるモデル計算結果および「立山におけるサブミクロン粒子の体積濃度」の時系列データとの比較検討に関して本特定領域研究のA01班内の九大・鵜野および名大・長田と討論し、共同の成果としてとりまとめつつある。