著者
福島(平川) あずさ
出版者
大妻女子大学人間生活文化研究所
雑誌
人間生活文化研究 (ISSN:21871930)
巻号頁・発行日
vol.2019, no.29, pp.101-111, 2019-01-01 (Released:2019-10-10)
参考文献数
27
被引用文献数
1 1

目的 玄米食者は便通や便の性状がよく,望ましい腸内環境である可能性があり,主観的健康感が高いことが報告されている.本研究では,主観的健康感と腸内細菌叢の関連性を明らかにすることを目的とした.方法 1,222 名が参加したGENKI Study の対象者に呼びかけて,Nested Study として97 名の便を集め16S rDNA アンプリコン解析を行い,門レベル,属レベルで主観的健康感との関連を検討した.結果 主観的健康感が高い者はとくに酪酸産生菌の占有率が高い傾向があり(p=0.052),またRosebria 属の占有率が高いほど主観的健康感が有意に高かった(p=0.020).主観的健康感が高かった玄米食者は酪酸産生菌が有意に高く(p=0.023),とくにFaecalibacterium prausnitzii (p=0.026),Rosebria (p=0.013),Bilophila (p=0.048)属の占有率が有意に高かった.考察 主観的健康感が高い者は酪酸産生菌や短鎖脂肪酸産生菌と関連があることが明確になった.腸内細菌によって産生される酪酸とその代謝産物は,直接ないし間接的に中枢神経系の回路網を介し情動に影響を及ぼすことが先行研究で推察されている.今後の研究課題は,対象の選択バイアスを少なくすると共に,追跡研究や介入研究によって,普遍性の高い,主観的健康感と「腸内細菌叢―腸管―脳」の因果関係を明確にすることである.結論 主観的健康感が高いほど酪酸産生菌のRosebria,Faecalibacterium prausnitzi の占有率は高く,短鎖脂肪酸産生菌Blautia,Bilophila 属の占有率が高いことが明らかになった.