著者
福成 信博
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.247-252, 2015 (Released:2016-03-04)
参考文献数
15

今回のATAガイドラインでは,超音波所見と予想される悪性の可能性および腫瘍径を制限した細胞診の適応に関して明らかに記載されている。1cm以下の腫瘍に対しては,特徴的な超音波所見,リンパ節腫大,臨床的高危険要素(幼児期の頸部への外照射歴,甲状腺癌の家族歴)などを除けば,1cm以下の危険性の少ない症例を精査から除外することを提唱している。また,微小甲状腺癌の全てに対して,極めてわずかな例外的結果を防ぐために精査,加療を行うことは患者にとって有益であるよりも,有害であると決断付けている。また,殆どの甲状腺癌は低リスクであり,多くの甲状腺癌は人体の健康をわずかながら脅かすリスクをみせているが,十分に治療可能であると述べられており,今回のATAガイドラインは,微小乳頭癌に対する精査・加療を不要との意思を明らかにしたものである。
著者
中野 賢英 福成 信博 坂上 聡志 西川 徹 相田 貞継
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.148-153, 2017 (Released:2017-11-16)
参考文献数
15

医療の技術革新が進む中で,甲状腺濾胞性腫瘍はいまだその診断が非常に難しい疾患の一つである。病理学的診断方法の特殊性もあり,確立した術前診断方法は得られていない。一方で,新しい技術の開発や様々な評価法の検討が,正診率の向上に寄与していることも事実である。画像診断はその中でも重きを置かれる分野であり,超音波検査を筆頭に多くの知見が得られているが,現状では,画像所見だけではなく,臨床経過,細胞診結果,サイログロブリン値などの臨床検査結果を踏まえて総合的に検討し,治療方針を判断する必要がある。今後より正確な診断が可能となるよう,さらなる知見の積み重ねが期待される。
著者
福成 信博
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.1-1, 2017 (Released:2017-04-28)

甲状腺結節に対する超音波診断が,結節の検出および良性・悪性の鑑別においてFirst-Lineの検査法であることは異論のないところである。しかしながら,2000年頃よりフルデジタル化された表在臓器様高周波超音波機器の国際的な普及に伴い,超音波スクリーニングにより無症候性の低危険度微小乳頭癌が数多く検出される事態となった。甲状腺癌自体の死亡率は変わらないため,米国,韓国から過剰診断,過剰診療であると報告され,ATAガイドラインにおける大幅な改訂がなされた。このような状況のなかで,甲状腺超音波検査そのものを無用の長物とする過激な意見も聞くことがある。はたして,約20年前の触診ベースで行っていた甲状腺診療に戻るべきなのであろうか?わが国では,1970年代より積極的に超音波診断を臨床応用し,海外に先駆けて超音波ガイド下FNAやカラードプラ,エラストグラフィという技術を開発し,臨床に用いてきた。RI治療の制限もあり,不必要な甲状腺全摘を避け,甲状腺癌の生物学的特徴を考慮した加療方針が選択されてきた。更に多数例の臨床研究から微小乳頭癌に対する非手術・経過観察を世界に先駆けて発信してきたのもわが国であり,その基盤には詳細な甲状腺超音波診断と高い診断能を有するFNAの技術があったからに他ならない。本企画では,このようなわが国における甲状腺超音波検査の歴史を貴田岡正史先生に紐解いて頂き,FNAの適応とコツに関して,北川亘先生に解説をお願いした。また,諸外国では得ることの出来ない多数例の微小癌経過観察における超音波所見の特徴に関しても福島光浩先生から貴重な報告を頂けることとなった。乳頭癌と異なりFNAにて診断困難となることの多い濾胞性腫瘍に関する超音波上の知見,腫瘍内血流や組織弾性を加味した超音波診断の可能性について,多くの臨床例を経験されている村上司先生に解説をお願いした。福島原発事故後の小児甲状腺に対する超音波を用いた県民健康調査の結果およびその推移は,甲状腺疾患を専門とするものにとって未だ最大の懸案事項である。不幸な結果に終わらぬよう祈念するとともに,これまで得られなかった小児甲状腺超音波の特徴が解明されきており,鈴木眞一先生にそのご報告頂く。甲状腺結節の診断,そして治療方針決定の基盤となる超音波検査とFNAをもう一度振り返り,また将来への新たな展望が開けることを期待している。
著者
福成 信博
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.307-313, 2012 (Released:2013-05-01)
参考文献数
14

甲状腺腫瘍に対するインターベンションは,のう胞性病変に対するエタノール局注療法が1980年代から試みられ,臨床効果が報告されてきた。のう胞病変に対する一定の効果は得られるものの,充実性,血流豊富な腫瘍性病変に対しては十分な効果とは言えなかった。現在,本邦において熱凝固療法としてラジオ波焼灼療法(RFA)が肝臓,腎臓,乳腺において臨床応用されており,甲状腺腫瘍に対しても,その臨床応用が開始されている。海外でも甲状腺良性腫瘍や切除不可能な悪性腫瘍を対象にRFAのみならず,レーザ治療(ILP)や集簇超音波治療(HIFU)などが実施され,現在多くの臨床報告がなされている。これまでの我が国における甲状腺Interventionの経緯と海外における現状をまとめると共に,現在,われわれの施設で行っている甲状腺RFAの現状に関して述べる。