- 著者
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福永 弘樹
林 春男
- 出版者
- 地域安全学会
- 雑誌
- 地域安全学会論文報告集
- 巻号頁・発行日
- no.2, pp.11-20, 1992-05
1991年9月27日の午後4時過ぎ長崎県に上陸した台風9119号は強風による多大な被害を全国にもたらし、広島市内では最長5日間の停電被害を受けた。このような長期停電はわが国の政令都市においては初めての体験であり、都市型災害の特徴であるライフライン災害の典型的な事例である。本研究は広島市民を対象とした意識調査を通して、都市化社会におけるライフラインの機能障害の影響とそれに対する住民の対応の実態を明らかにすることを目的にしている。本報告では、広島市民の不安を中心に、その規定因と災害対応の特徴について速報する。今回の台風9119号災害時の住民の不安は2種類の不安に分類することができた。1つは個人的な生活に関する不安で、もう1つは社会サービスの提供に関する不安であった。どちらの不安が住民にとって高かったかといえば、個人的な生活に関する不安であった。このことは住民が社会サービスの提供に信頼を抱いているからだと考えることができる。その理由は、広島市の中心部での停電が短く「文明の島」として機能していたためではないかと推測される。この地域は電線の地中化により塩害停電の影響を受けなかったため、各種の社会サービスの提供に支障がなかった。このような地域が居住地域内に存在することで、住民は「文明の島」に行けばサービスが受けられるため、それが社会サービスの不安が低かった原因と考えられる。またこれらの不安を規定する要因には、被災体験と被害がみられたが、個人的な生活に関する不安は性別・年齢・居住形態といった他の規定要因も存在することが確かめられた。そしてこのような個人的な生活に関する不安が高い人は、災害に対する備えといった対応行動が遅く、また隣近所通しのローカルなコミュニケーションを中心に情報を伝達していることが特徴的にみられた。