著者
東野 英明 木下 孝昭 栗田 隆 濱田 寛 江藤 浩市 福永 裕三
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.164-169, 2011-04-15 (Released:2011-05-31)
参考文献数
15
被引用文献数
2

経済的余裕や農業生産技術の普及・発展により食質と食量が豊富で過剰となり,それによって生活習慣病が増加し,現今ではその克服が現代人の最大関心事になりつつある.生活習慣病の中でも,治療困難性と致死的続発症から糖尿病治療が緊急の課題になってきている.2型糖尿病は原因遺伝因子保有者の過食による肥満が原因で,高血圧,動脈硬化,心筋梗塞,腎障害,脳卒中などの続発症を招来する.食後の血糖値をα-グルコシダーゼ阻害薬を用いて上昇抑制すると,ある程度改善できるが副作用の報告も多い.その点,古くから食物の色付け,匂いつけ,食欲増進,防腐,抗酸化,抗アレルギー,心臓血管保護作用物質として用いられてきた安全性の高いシソには,α-グルコシダーゼ阻害作用を持つロスマリン酸が含まれている.そこで,ロスマリン酸を多含有するシソ抽出物製造法を工夫し,正常および糖尿病誘発ラットを用いてin vitro, in vivoで酵素学的,生理学的にその糖代謝に及ぼす影響を総合的に実験観察した.その結果,ロスマリン酸多含量シソ抽出物希釈液は,生体に悪影響を与えずに,α-グルコシダーゼ阻害作用,直接的なブドウ糖吸収抑制作用,遷延的作用で有意な食後血糖値上昇抑制作用を示すことが証明された.この結果は,シソ抽出物のこれまでの単純な食品添加物以外の利用,つまりは健康維持面での利用拡大が図れることを示唆している.