著者
山田 正良 龍見 雅美 福澤 理行
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

シリコンやGaAsなどの大口径半導体結晶塊を対象に、結晶引上げした円筒状の塊のまま、すなわち、結晶塊を何ら加工しない状態で、残留歪みの三次元分布を非破壊評価する新しい方法を開発し、その実用化を図ることを目的とした。このため、円筒状半導体結晶塊に直線偏光した赤外光を、円筒r軸ならびにz軸に沿って入射し、その透過光の偏光状態を測定する三次元赤外光弾性CT装置を試作し、LEC法で成長したLEC-GaAs単結晶塊、FZ法で成長した無転位FZ-Si単結晶塊、CZ法で成長したCZ-Si単結晶塊について、赤外光弾性測定を試み、残留歪みの評価を行った。LEC-GaAs単結晶塊では、結晶引上げしたままの円筒表面には大小の凹凸があるため赤外光弾性測定は困難であった。しかし、表面が鏡面でなくても円筒研削で荒れたままの状態でも赤外光弾性測定ができる新しい方法を考案した。これによって、LEC-GaAs単結晶塊中の残留歪みの擬似三次元分布評価ができることを明らかにした。無転位FZ-Si単結晶塊では、結晶引上げしたままの状態で赤外光弾性測定が可能であった。無転位FZ-Si単結晶では残留歪みが極めて少ないため、光弾性効果による複屈折よりも光学異方性による複屈折が支配的であることが明らかとなった。CZ-Si単結晶塊でも、光学異方性による複屈折が支配的であったが、赤外光を異方性がない[100]方位から入射することによって、残留歪みに起因する、光弾性効果による複屈折のみが測定可能であることを示した。これにより、本研究で開発した赤外光弾性法は、大口径シリコン単結晶の有転位化を調査するのに極めて有用であることが明らかとなった。