著者
山川 勝史
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

ウイルスに関する特性データを取り入れることで気流とは異なるウイルスの動きを利用し、インフルエンザ感染ルートの特定を目指した。人の呼吸による影響まで含めた詳細な室内流れを用いて、満員電車内や教室内における空気感染の特定に成功した。また一旦人間が吸い込んだウイルスの振る舞いについても、気管内流体計算により、ウイルスの毒性の違いによる感染の可能性についてまで言及できるレベルにまで到達することが出来た。
著者
高橋 雅興 田中 克史
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

高度通信情報化にともない、放射電磁波の増大や利用周波数領域の多様化が起こり、電磁干渉による電子機器の誤作動が大きな問題となっている。本研究の目的はGHz帯域における吸収性能に優れた電磁波吸収体を創製することである。高分子ブレンドの相分離構造や架橋網目の網目サイズを利用して、ナノカーボン粒子のネットワーク構造を作り、導電性と電磁波吸収性能を飛躍的に高めた。ナノカーボンとして鎖状構造をとりやすいアセチレンブラック(AB:直径20nm)とカーボンナノファイバー(VGCF:直径150nm,長さ10-20μm)を用いた。ナノカーボンの分散と導電性・誘電性の相関、総合的な結果としての電磁波吸収性能の関連がほぼ明らかになった。主な研究結果は次のようにまとめられる。1.ABは凝集クラスターが種々の形をとり、自己相似のフラクタル構造になりにくいが、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)中では、長時間アニールで導電性のパーレーションしきい値を2.2vol%と驚異的に低くできる。シリコンゴムでは、網目サイズをABの一次粒子の直径程度にすることでABの分散制御が可能となる。いずれの系においても導電性のしきい値を少し越えた充填量で、コンポジットは95%以上の高い電磁波吸収性能を示す。2.高密度ポリエチレン(HDPE)/ポリプロピレンブレンドの共連続構造中で、VGCFはHDPE中に局在して、単体中よりしきい値が低下し導電性が増大する。PMMAにごく少量のHDPEを加えると、粗いVGCF末端へのHDPEの吸着がVGCFの連結に寄与し、PMMA単体中よりも導電性が飛躍的に高くなり95%以上の電磁波吸収率を示す。3.反応性シリコン/VGCF分散複合系に電場を印加し、光学顕微鏡観察を行い誘電性の時間変化を測定した。VGCFの電場方向への配列傾向とともに、貯蔵誘電率・損失誘電率が増加する結果が得られた。
著者
岩本 馨 松山 恵 岸 泰子 初田 香成
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

平成29年度は前年度に議論した大方針をふまえて、より具体的なレベルでの項目検討を行った。計3回の研究会を開催したが、今年度は分担者の松山恵が在外研究で日本を離れていたので、研究会での議論は他の3人で行い、松山とは事前・事後のメールによって議論を共有し、意見交換を行うかたちをとった。まず第1回研究会は2017年7月4日に京都工芸繊維大学で開催した。この日は全員が図化のパイロット版を作成して持ち寄り、構成について議論を行った。図化にさいしては、都市史の通史的把握上基本となる図と、詳細・分析的な図を作成し、また時代や地域を横断するような分析も行うという方針を定めた。また基軸となる縮尺を定めることで、異なる項目間の図版の比較にも留意することとした。つづいて第2回研究会は9月26日に京都工芸繊維大学で開催した。この日は第1回の議論をふまえて、岸が古代・中世、岩本が近世、松山が近現代(前半)、初田が近現代(後半)を担当として、図化すべき項目案を作成し、持ち寄り議論を行った。このときの項目案はひとまず網羅的に列挙したものであったので、第3回研究会を12月15日に京都府立大学にて開催し、項目数の絞り込みと具体的な作図対象候補についてさらに詳細な議論を行った。ここでは、地方都市研究の成果の盛り込み、隣接他分野の視点の必要性について議論がなされた。今年度の議論により、図化の小方針も固まったので、最終年度はいよいよ個別の項目について、研究者を招いての議論と作図を進めていきたい。
著者
藤原 進 中村 浩章 阿蘇 司 米谷 佳晃
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2021-07-09

福島での原発事故において、トリチウム汚染水の処理が社会的関心を集めている。トリチウム被曝では、従来の研究で考慮されてきた直接作用と間接作用に加えて壊変効果が存在するにも関わらず、これまで見落とされてきた。本研究では、トリチウム被曝の第三要素「壊変効果」に着目し、置換トリチウムのβ壊変によるDNA損傷の分子機構を分子シミュレーションにより解明する。具体的には、トリチウムの置換部位を特定するための分子動力学(MD)計算とDNAの壊変効果を解析するための反応力場MD計算の組合せにより、置換トリチウムの壊変効果を解き明かす。さらに、置換トリチウムの壊変効果も含めたGeant4-DNAの開発を進める。
著者
並木 誠士
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

日本の中近世において、狩野派をはじめとする絵師たちは、中国で成立した画題を、筆様制作を通して受容し、手本となった中国絵画をもとに障壁画のような大画面に展開した。その過程で、状況にあわせて構図などを変容し、また、情景・人物などを和様化するなどして、画題として伝達し、さらに蓄積していったことを、文献史料と作品を通して明らかにした。
著者
倉本 到
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究は,インタラクションエージェントに個性を付与することにより,その対話経験を豊かにすることを目指した.その結果(1)人間の性格を付与したエージェントとの意思決定対話の満足度や推薦への影響が見られた,(2)外見的性質に基づきユーザの内面的性格を表出する手法として,アニメ―ションや漫画などで用いられるステレオタイプ性の強い性格表現法および「母親らしい」テキスト表現を用いることで,擬人化エージェントが提供するインタラクティブシステムの機能性や性質を明らかにしたり,ユーザへより親密な,かつより強く印象付けられるような表現を作り出すことができた.
著者
岩崎 仁 萩原 博光 小泉 博一
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

平成15年度は、国立科学博物館植物研究部保管の南方熊楠菌類図譜の調査とスキャニングによるデジタルファイル化をおこない、その結果3,800点余となった。同時に図譜記載英文の調査と翻字作業をおこなった。平成16年度はまず、1901年から1911年にかけて描かれた菌類図譜デジタルデータ130点ほどを中心に、図譜記載英文テキストおよび当時の日記テキストを関連づけて組み込んだ公開用画像データベース(試作版)を構築し、龍谷大学オープンリサーチセンター展示「南方熊楠の森」(平成16年6月7日〜8月1日開催)において一般公開した。南方熊楠旧邸保管の写真類、画像関連資料についてもおおむねデジタルファイル化を終了した。さらに、書簡類および日記についても早急なデジタルファイル化の必要性を感じたため平成16年度の後半はこの作業に力を注いだ。特に土宜法竜との往復書簡については新資料が大量に発見されたこともあり、この作業が今後の熊楠研究に寄与するところは大きいと考える。また、図譜記載英文については現在3,200点ほどについてテキストファイル化が終了したが、その後も京都工芸繊維大学工芸学部と国立科学博物館植物研究部の両者で進行しており、その完了は当分先になる見込みである。インターネット上での公開については菌類標本の所有・管理者である国立科学博物館、平成18年4月に開館が予定されている南方熊楠顕彰館を運用する和歌山県田辺市、および研究代表者の三者で環境を整えるための協議をおこない、龍谷大学人間・科学・宗教オープンリサーチセンターホームページにて公開用画像データベースを近々公開することが決まり、現在その準備中である。このように、菌類図譜デジタルデータは、その範囲を全ての菌類図譜へと拡大した画像閲覧データベースの整備がほぼ終了し、今後はテキストファイルと連携した統合型の南方熊楠データベースへと発展させる予定である。
著者
大田 陸夫 福永 二郎
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1990

溶融法によるガラスの作製においては高融点系では溶融温度に実験上の制限がある一方,結晶化しやすい系や組成ではガラスを得ることが出来ない,ゾルゲル法においてはゾル溶液からゲルを経て,ガラスを作製するので溶融法における高融点のため実験不能という事態は避けられる。しかしながらゲルの生成能はガラスの生成能と深く関連しており,ゲルからガラスを作製する上でもゲルの熱的安定性が問題になる,本研究では基本的な系として,B_2O_3ーNa_2O,B_2O_3ーNa_2OーAl_2O_3およびSiO_2ーNa_2O系をモデルとしてとり上げ,ゾルゲル法によるゲルの熱的安定性を調べ,ガラス化領域とゾルゲル法によってどの程度広げられるかという問題に答えるための研究を行った。まず上記の系のゲル化領域とゲルの熱的安定性を調べた。ゲル化領域に対する水分,塩酸,アンモニアの添加の影響と検討した。ゲル化領域はB_2O_3ーNa_2O系ではB_2O_3=100および<60モル%以外の組成域であった。B_2O_3ーNa_2OーAl_2O_3系ではB_2O_3ーNa_2O系で結晶化した領域がゲル化するところも現れた。SiO_2ーNa_2O系ではゲル化領域はSiO_2=60ー100モル%組域であった。ゲル化領域は水の添加によって殆ど変化せず,塩酸の添加によってはゲル化領域はSiO_2=100%組成似外は存在しなかった。ゲル化特間は水分またはアンモニアの添加とともに短縮した,ゲルを昇温速度5℃/分でDTA測定を行い,発熱ピ-クから結晶開始温度Tcを決定した。T_LはDTAおよび加熱マテ-ジ付き顕微鏡によって直接観察して求めた。溶融法によっても同上の系のガラス化領を求め,DTA測定を行った。B_2O_3ーNa_2O系のTc/T_L比はB_2O_3=70モル%および80モル%にそれぞれ極大値および極小値が現れた。ガラスについても同様な組成依存性が現れることを確認した,Tc/T_L比はゲルやガラスの熱的安定性を示とと同時にその生成能を示す示標であることが確かめられた。Tc/T_Lー臨界冷却速度Qとの対応関係を実験値から検討した。更に理論的考察を加えた。
著者
飯間 等 黒江 康明
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

通常の強化学習では一つのエージェントのみを用いて学習を行うので複雑な問題では学習に時間がかかりすぎるという欠点がある。したがって、強化学習の実用化に向けて学習を高速に行う新しい方法を開発することが必要不可欠である。本研究では、短時間で学習を行うために複数のエージェントを用意し、各エージェントが通常の強化学習法で学習を行うとともに、エージェント間の情報交換により他のエージェントの学習成果を参照して学習を行う群強化学習法を提案した。本年度は、鳥の群れ行動にヒントを得た最適化手法であるParticle Swarm Optimizationを用いた群強化学習法におけるエージェント間の情報交換方法を提案した。また、各エージェントが行う個別学習法として、SarsaやActor-Criticを用いた方法を提案した。また、より複雑な問題に対する群強化学習法の有効性を検証するために、倒立振子制御問題、サッカーゲーム問題、マルチエージェント環境の問題に群強化学習法を適用し、これらの問題に対しても短時間に良い方策を獲得できることを確認した。さらに、蟻の群れ行動にヒントを得た最適化手法であるアントコロニー最適化法を用いた群強化学習法を提案した。この群強化学習法では他のエージェントの学習成果を行動選択に利用する新しい枠組みを用いている。以上の成果より、従来の1エージェント強化学習法より短時間に良い方策を獲得できる群強化学習法を開発することができた。
著者
伊藤 徹 秋富 克哉 荻野 雄 笠原 一人 昆野 伸幸 西川 貴子 西村 将洋 松隈 洋 長妻 三佐雄 若林 雅哉
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

1890年代から1950年代の日本において、知識人や芸術家たちを支えた≪語り≫を主題とする本研究は、哲学、政治学、経済学、文学、建築、美術工芸、演劇などの諸局面で、それが、どのような形で生産され、また消費されていったのか、その具体相を明らかにした。≪語り≫とは、近代化によって従来の生の地盤を掘り崩された後に生じた空隙を埋めるべく創出された、共同的な基礎的虚構群を意味する。本研究は、自己産出的な幻想によって自己を支える構造を、当該の時代の精神史の内に見出した。
著者
箕田 雅彦
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

平成17年度は、高分子材料を常圧常温下で擬似体液(SBF)中へ浸漬するというバイオミネラリゼーションに倣った手法により、キチン/アパタイト粒状ハイブリッドを創製した。市販の多孔性キチン粒状ゲルをSi(OEt)_4を用いるゾル-ゲル反応によりカルシウムシリケート化してSBFへ浸漬することでハイブリッドを得た。さらに、CH_3Si(OEt)_3含有ゾルを用いて同様に処理することで、ハイブリッド表面無機層を改質した。また、バイオミネラリゼーションに倣ったPP、PET材料とアパタイトとのハイブリッド化についても検討した。高分子基板をTi(OiPr)_4を用いるゾル-ゲル法でチタニアコートし、沸騰水中で3時間保持してチタニア層の結晶構造変換を行ったのちSBFへ浸漬することで、アパタイトとのハイブリッドを得た。既報の希塩酸加熱処理法に比してより穏和な熱水処理法が、チタニア層の結晶構造変換に有効であることを明らかにした。平成18年度は、有機/無機界面強度の増大によるハイブリッドの力学的特性の向上をねらいとして、高分子の表面修飾反応を検討した。PET基板をアルカリ前処理して3-イソシアナートプロピルトリエトシキシラン(IPTS)と反応させることで表面にIPTS残基を導入した。続いて、Ti(OiPr)_4を用いるゾル-ゲル法によるチタニアコーティングと熱水処理を行った後SBFに浸漬することで、試料表面にアパタイトを形成させることができた。さらに、粘着テープによる剥離面をXPS解析した結果、IPTS処理無しの試料に比して、基板表面をIPTS処理したハイブリッド試料では剥離強度の増大が認められた。また、ハイブリッド形成時のチタニア層とのネットワーク形成ならびに投錨効果による有機/無機界面強度の増大をねらいとして、PET基板表面へ-si(OMe)_3側鎖を有するグラフトポリマー鎖を導入する手法を開発した。
著者
勝本 雅和
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

意匠権の書誌情報に基づき、企業のデザイン活動に関して、その量的水準、デザインマネジメントに関連する構造、デザイン活動の質を計測する手法を開発した。またそれらを用いて企業パフォーマンスへのデザイン活動の影響を分析した。その結果、デザイン活動の水準は企業パフォーマンスに正の効果があり、その効果は研究開発投資と比較すると概ね10分の1程度であることが明らかとなった。またデザイン活動の構造、質についても企業パフォーマンスに影響を与えることが示された。
著者
池元 茂
出版者
京都工芸繊維大学
巻号頁・発行日
2019

本論文は自動車の車体修理を行う板金塗装技術者の技能について,作業時の動作解析を中心に身体知・暗黙知の形式知化を行ったものである.さらに得られたデータを活用し,技術習得のためのeラーニング教材を作成した.
著者
澤田 美恵子
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
京都工芸繊維大学学術報告書 = Bulletin of Kyoto Institute of Technology (ISSN:18828779)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.29-44, 2020-12

本稿では「私は今この人とともに何かをしている」という感覚を「共在感覚」と呼び、この感覚を呼び起こすような現代日本語の言葉を中心に分析を試みた。具体的には、現代日本語の「こんにちは」や「行ってきます」などの挨拶語と、日本語学においてもまだ完全には解き明かされていない「太郎ちゃんも大きくなったなぁ」などの文中で使用される詠嘆の「も」と呼ばれる助詞に着目し、話し手と聞き手が共有する環境への知覚をコミュニケーションの基盤として、話し手が現在や過去における共在感覚を聞き手に発話時に意識化させようと意図する表現であることを指摘した。「先日はありがとうございました」のような特別な表現を除く挨拶語の場合は発話時の時空間における共在感覚を、詠嘆の「も」の場合は過去における共在感覚を、発話時の時空間の共在感覚と重ね、発話時の「今ここ」において、聞き手に過去の時空間を意識させることによって、話し手は協調的コミュニケーションに向かおうと意図していた。こういった言語の使い方の基盤にあるコミュニケーションのあり方は、現代日本語だけの特別なものではないこと、Ecological Approach をとる Gibson, James Jerome や Neisser, U.などの視点から普遍的に妥当する可能性を有することを指摘した。
著者
佐貫 理佳子
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

外傷性脳損傷(TBI)のモデルとしてショウジョウバエを用いた解析を実施した。前年度までにミノサイクリンの薬効が若齢と老化個体で異なることを見出した。この解析をさらに進め、ミノサイクリンがTBIではなぜ若齢ショウジョウバエにのみに有効かを調べた。その結果、ミノサイクリンは若齢群の引き起こす自然免疫の活性化を抑制することができるが、老化群ではそれができないことが明らかになった。また、バルプロ酸は神経保護薬として緑内障の治療においても期待されているが、ショウジョウバエでは明確な有効性は示さなかった。自然免疫との関連をさらに解析するために、いくつかの遺伝子についてノックダウンできるショウジョウバエ系統を入手した。入手したショウジョウバエ系統を用いてノックダウンを実施したが、系統間の遺伝的背景の違いによりノックダウンの効果がマスクされてしまうことが分かった。そのため、アウトクロスを繰り返し、野生型として用いられるCanton S系統に遺伝的背景を置き換えた。また、哺乳動物での検証のためマイクロRNAを用いた老化細胞モデルの作製に取り組んだ。17ラインの細胞を得ている。この際に利用したマイクロRNAの生体における効果についても検証した。さらに、マウスの初代培養細胞を長期間にわたり培養し、自然老化モデルとして使用可能であることをb-gal解析によって確かめた。脳損傷時を模倣できる処置を行い、死亡する細胞の数が培養期間の短いものに比べて増加することが分かった。
著者
武田 知也
出版者
京都工芸繊維大学
巻号頁・発行日
2017

日本人は挨拶・感謝・謝罪の場面などで頻繁にお辞儀をする。本論文においてお辞儀を取り上げる理由は多くあるが、まず、日本人はビジネスをするうえでコミュニケーションの第一歩として挨拶を重んじ、挨拶儀式の中心にお辞儀を位置づけていることが挙げられる。その他にもビジネス界で謝罪のお辞儀の仕方が年々重要になってきていることや、訪日外国人の急増により「おもてなし」が注目されていることなどもお辞儀を研究対象とした理由として挙げられる。 日本人ほど頻繁にお辞儀をする国民は世界で他にないが、お辞儀の動作は頭頂を見せることで相手に服従の心を示すことであるから、世界でもお辞儀は古代から変遷がありながらも現代まで残存している。第1章では地域・宗教別にお辞儀を紹介し、我が国の古代から現代までのお辞儀の変遷について述べる。さらに小笠原流礼法や茶道裏千家、神道礼法、本論文のベースとなるビジネスマナー教育におけるお辞儀について述べる。 第2章では動作解析によって熟練者のお辞儀(立礼)の特徴を捉えることができた。一般に敬礼は腰を30度に曲げるものというが、熟練者の腰の角度の変化量は実際に熟練者が置かれている指導の状況が角度の変化量に影響しており、敬礼といえども指導テキストにある「30度」という一定したものではないことが示された。また、首の角度の変化量が屈曲で負の値をとることが多いことは相手への視線をすぐに外さないことを示していることの現れであり、時間と角度速度について、屈曲と伸展時間が同等あるいは伸展のほう時間が長く、角度速度は同等か伸展がゆっくりした速度となるのは、「お辞儀が終わっても相手への感謝などの心を残す」ということの実践の結果、丁寧な動画となって伸展がゆっくりと表現されるためであることが分かった。 第2章の結果は第3章で明らかになった非熟練者の特徴と照らし合わせると意義深い結論とすることができる。自己流においては個人間のバラつきが大きい非熟練者のお辞儀であるが、熟練者のお辞儀を撮影した動画による自己学習によると、首の角度と腰の角度の同調が解消される効果が認められ、角速度はゆっくりとなり、さらに指導を加えると角速度をさらにゆっくりとすることができるが、第2章で明らかになった「首の角度の変化量が屈曲で負の値をとる」「屈曲と伸展時間が同等あるいは伸展のほう時間が長い、角速度は同等か伸展がゆっくりした速度となる」という点は習得できないことが分かった。 第4章では非熟練者のお辞儀動画から得られた動作指標と熟練者による評価評点との相関を調べた。熟練者の評価の視点は一様でなく、時間、首・腰の角度、角速度などの中で熟練者の評価に特色が現れることが分かった。またクラスター分析において非熟練者のおじぎの類型を5つに分類できた。 第5章では、接客サービスという場面設定で非熟練者が陥りやすいお辞儀の特徴の印象評価への影響について明らかにすることができた。60度と30度のお辞儀の比較では30度のお辞儀の評価が高く、接客サービスの場面に適しているという点が分かった。同様に手の位置については横や後ろよりも手を前に組むほうが場面に適していること、速すぎるお辞儀をするよりは深いお辞儀をするほうが場面に適していることが分かった。さらにエキストラがいない場合に最も高い評価であった敬礼の印象評価がエキストラの存在によって低下し、深すぎるお辞儀と有意な差がみられないことが分かった。 第6章では座礼における印象を動画とアンケートによって調査したところ、角度の深さが丁寧な印象に関係していることが分かった。一方静止時間との関係をみると静止時間がない場合は丁寧さの評価は低いが、1秒以上の静止時間をとると丁寧さの評価は向上することが分かった。また静止時間0秒から1秒にすると自然な印象を与えるが、1秒以降静止時間が長くなると、その印象が急激に低下する。 第7章では、本論文のまとめを述べた。