著者
福田 理絵子
出版者
北里大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1998

本年度の我々の研究は、前年度確立したラット頬髭の毛乳頭細胞を使用した、毛乳頭細胞凍結保存法を用いて、臨床の場でも今後この凍結プログラムが使用可能かを見極める事である。その方法としては、頭部腫瘍や瘢痕拘縮修正術を行う際に出る正常ヒト毛乳頭細胞を患者の承諾を得て採取する。正常毛乳頭細胞は少量のため既知の方法にて培養後に使用した。前年度に我々が確立した凍結法に基づき処理した後に、コンピューターフリージングを施行した。ラットに比べ細胞の回収率は低いが保存量としては十分と考えられた。(ラット毛乳頭細胞の場合60〜70%に対しヒト毛乳頭細胞では、50〜60%であった。)解凍後のヒト毛乳頭細胞を培養系に戻すと、2〜3日は正常の増殖過程が認められず、その後正常増殖が開始され細胞数が増加した。これら、凍結保存後のヒト毛乳頭細胞を前年度同様にヒト毛包との共培養の系に移植する予定であったが、同時期に正常ヒト毛包を得る事が出来ず、また毛乳頭細胞も十分な供給量が得られなかったため、共培養は断念した。そこで、我々は解凍ヒト毛乳頭細胞をヌードマウスの肉様膜上に移植した。3体のヌードマウスの計4箇所にそれぞれ移植し観察した。しかし、2箇所移植したヌードマウスは移植後2日目に死亡し、他の2体でも発毛は観察されなかった。本年度の我々の研究はまだこの段階である、今後解凍後のヒト毛乳頭細胞の回収率を上げる必要性があると思われた。得にラットに比べヒトの場合、解凍後の培養系に置いcontaminationを起こす確率が高い、これは手技的な問題もあるがラットにくらべるとヒト毛乳頭細胞の方がcontaminationに弱いとも考えられる。さらにヒト毛乳頭細胞においても共培養の系を試みる必要があり、これらの課題をクリアーした上で臨床試験に移りたいと考えている。