著者
福田 真由子 崎尾 均 丸田 恵美子
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.387-395, 2005-08-31
参考文献数
25
被引用文献数
14

日本の河川敷で分布しているハリエンジュの種子繁殖とその初期侵入過程を明らかにするため、定着初期のハリエンジュ群落が成立する埼玉県の荒川中流域の中州において、2001年9月-2003年12月の期間に追跡調査を行った。その結果、ハリエンジュは春の発芽は見られないが、期間中に台風により中州が水没して土砂の供給を受けた各3回の増水の後、新たな堆積物上に一斉に発芽が見られ、河川敷で種子繁殖していることが明らかとなった。増水の時期が異なる3つの当年生実生集団の最終個体重を比較した結果、増水の時期が早いほど発芽当年の最終個体重は大きくなり、また最終個体重が大きくなるほど翌年までの生存率が高くなる傾向が見られた。そして遅くても9月の増水によって発芽することが定着のためには必要であることがわかった。増水後に発芽した実生は、粗砂からなる粒径組成の堆積物に集中して見られ、このような堆積物はハリエンジュの発芽に適した条件を備えているといえる。