- 著者
-
渡辺 哲郎
永田 豊
福田 秀彦
長坂 和彦
- 出版者
- 一般社団法人 日本東洋医学会
- 雑誌
- 日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
- 巻号頁・発行日
- vol.67, no.3, pp.230-243, 2016 (Released:2016-11-22)
- 参考文献数
- 39
- 被引用文献数
-
2
4
特発性腸間膜静脈硬化症(idiopathic mesenteric phlebosclerosis, IMP)は,腸間膜静脈壁硬化に起因した還流障害による慢性虚血性腸病変で,右半結腸を主体に,青銅色調の粘膜変化,腹部単純X 線撮影検査や腹部CT 検査での腸管や腸管周囲静脈の石灰化を特徴とする。近年漢方薬長期投与中のIMP 発症例を散見するが,漢方診療を専門に行う外来での実態は明らかではない。今回,諏訪中央病院東洋医学センターを5年以上通院する患者を対象としてIMP 罹患の有無を検索したところ,対象257名中2名(0.8%)で認めた。いずれも山梔子を含む方剤を長期服薬し,一例は急性腹症で緊急手術が施行され,一例は無症状であった。発症機序は不明な疾患であるが,長期に漢方治療を受ける患者,特に山梔子服薬患者においては,その存在を念頭におき,無症状例であっても積極的な画像検索を行う必要があろう。