著者
福田 順
出版者
四天王寺大学
雑誌
四天王寺大学紀要 (ISSN:18833497)
巻号頁・発行日
no.70, pp.159-182, 2022-03-25

「現代貨幣理論(MMT)」の政策提言は多岐にわたるが、最も特徴的なものは、非自発的失業者には無条件で政府が仕事を提供する「就業保証プログラム(JGP)」である。景気が悪化した時にはJGP の利用者が増え、景気が回復した時にはJGP の利用者が減るので、マクロ経済的安定が自動的に達成されると考える。重要なことはJGP で取り組む事業は環境、地域社会、人間に対する広い意味でのケア労働であるということであり、持続可能な開発目標(SDGs)の実現に大いに貢献しうるという点である。一方で、JGP に対してはMMT を支持する論者からも疑問が投げかけられている。本稿ではJGP に対する批判を検討し、さらにベーシックインカム( BI )、ワークフェア政策、雇用調整助成金との比較を行い、さらに、先行研究が提唱した「グリーン・リカバリー戦略(GR 戦略)」の経済効果の再推計を行った。検討の結果、先行研究が指摘するように、JGP が扱う仕事内容はあいまいな部分が多いものの、一方でJGP は他の政策と比べると、非自発的失業者の「就労権」を強調した政策であることが明瞭になった。またGR 戦略の再推計では、第2 次間接効果を含めた総合効果においては、先行研究と同程度の雇用創出効果が得られることが分かった。