- 著者
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福西 悠一
- 出版者
- 京都大学
- 雑誌
- 特別研究員奨励費
- 巻号頁・発行日
- 2008
1.マダイとクロダイにおける天然稚魚と飼育稚魚の黒色素胞の違い昨年度、マダイとクロダイにおいて天然稚魚と飼育稚魚の紫外線耐性を比較したところ、マダイでは両者の間に差はみられなかったが、クロダイは、飼育魚よりも天然魚の方が紫外線耐性が高いことが明らかになった。そこで、本年度は紫外線耐性に差が生じるメカニズムを明らかにするために、紫外線を吸収するメラニンを主成分とする黒色素胞の密度を天然魚と飼育魚で調べ、比較した。その結果、黒色素胞の密度は、マダイでは両者の間に差がなかったのに対し、クロダイでは天然魚の方が飼育魚よりも高いことがわかった。したがって、クロダイは、天然海域において後天的に黒色素胞を増加させることで、紫外線の強い浅い海域に適応していることが示唆された。2.3目6種(マダイ・クロダイ、ホシガレイ・ババガレイ、クサフグ・トラフグ)の黒色素胞の発達過程と紫外線耐性との関連昨年度は、紫外線耐性の個体発生を3目6種で調べ、近縁種間で比較した。その結果、紫外線耐性は生息域の紫外線レベルを反映しており、浅い所に棲息する種や発育段階ほど高い紫外線耐性を持つことが明らかになった。本年度は上記6種の黒色素胞の発達過程を調べ、紫外線耐性と黒色素胞との関連を探った。その結果、紫外線耐性の強いクロダイはマダイよりも頭部や腹部に多く黒色素胞を持つことがわかった。また、ホシガレイの紫外線耐性の個体発生は黒色素胞密度の発達と密接に対応していた。さらに、波打ち際に分布するクサフグの仔魚は頭部の黒色素胞が発達しているのに対し、深場に分布するトラフグの仔魚は黒色素胞がクサフグよりも少ないことがわかった。これまで海産魚類の黒色素胞の生態学的な意義としては、背景への隠蔽色としての働き等が考えられて来た。本年度の一連の結果より、黒色素胞は、紫外線への適応という役割もあることが示唆された。