- 著者
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福見 尚哉
- 出版者
- 日本雑草学会
- 雑誌
- 雑草研究 (ISSN:0372798X)
- 巻号頁・発行日
- vol.56, no.1, pp.1-6, 2011 (Released:2011-09-09)
- 参考文献数
- 18
- 被引用文献数
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冬季休閑水田において埋土位置および地表面被覆状態の異なる条件に置いたクサネム(Aeschynomene indica L.)種子の,休眠覚醒程度と夏季湛水条件下での発芽挙動を調査した。秋季に土中10cm深に埋土した種子は,地表面被覆状態にかかわらず,水稲移植時期である5月中下旬にかけてほとんど休眠覚醒が進まなかったが,地表面の種子は休眠覚醒が進行した。ただし,稲わらなどの被覆物の存在する条件では地表面の種子の休眠覚醒は遅延し,裸地条件では5月中旬までに95%以上の種子が休眠覚醒したのに対し,稲わら被覆条件では5月中下旬の時点でも50%以上の種子が休眠状態であった。裸地条件の地表面に置いた種子を5月中旬に水面に浮遊させると5日以内に80%以上が発芽し,7月初めの時点で生存種子は残存しなかった。土中や稲わら被覆条件の地表面に置いた種子からの水面浮遊条件での発芽数は少なく,半数以上の種子は7月初めまで休眠状態を維持して生存した。以上の結果から,稲わらを持ち出したうえで冬∼春季を休閑・不耕起状態で管理すれば,前年秋に散布されたクサネム種子の大部分は休眠覚醒し,水稲栽培期間中にほとんどが発芽等によって失われるものと推察された。