著者
秋吉 祐子 増子 隆子
出版者
日本マクロエンジニアリング学会
雑誌
MACRO REVIEW (ISSN:09150560)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.3-11, 2009 (Released:2010-01-28)
参考文献数
22

20世紀後半以降は人類の生存に直接関係する食の安全性が世界的な共通課題となっている。食肉を提供する家畜の病気(BSE、鳥インフルエンザ)、その人間への感染性をきっかけに世界的に食品安全行政への真剣な取組が行われてきた。本稿はその事例として日本、アメリカ、EU、中国の状況とその方向性を概観する。事例にみる共通性は、農場から食卓に至るフードチェーンをリスクアナリシスの手法を用いて安全性を確保することにある。ことの重大性に鑑みて食品安全委員会のような組織の導入が行われる事例もある。事の判別の困難さおよび複雑性において予防原則の導入の事例や、食の安全性意識の醸成を社会の根本的役割である教育に求める食育教育を強調する事例もある。本考察から示唆されることは現在の社会的危機において、安全な食の提案を起点とする社会システムモデルの構築とそれを創造する意識•認識の必要性である。