著者
秋山 孝子
出版者
Meteorological Society of Japan
雑誌
気象集誌. 第2輯 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.304-316, 1975 (Released:2007-10-19)
参考文献数
6
被引用文献数
31 48

豪雨期間を含む1972年6月29日から7月14日に至る16日間について,日本列島近傍の水蒸気流束分布•水蒸気収束の状況を解析した.その結果は下記のごとくに要約される.(1)豪雨域の下層(700mb∼地上)で,強い水蒸気流束の収束がみられる.この収束は,下層の水蒸気sink(負のδq/δt,つまり降水)をもたらすと同時に.上向きのωqを通して,上層でのsinkをひきおこす.(2)稠密な雨量観測点から求めた面積平均雨量と,収支計算から求めた降水量は,よい一致を示している.(3)降水量の多寡によって,解析期間を"light","heavy"および"extremely heavy"rainfall periodに分類すると,その各々について,極めて特徴的な水蒸気流束分布が得られた.(4)heavy rainfall periodでは,南西諸島海域からSW-風によって,日本列島上のcloud zoneに流入する水蒸気流束の収束が特徴的である.またこのSW-水蒸気流束は,南西諸島海域で,太平洋上からの湿潤なSE-風によって強化されたものである.(5)extremely heavy rainfall periodでは, cloud zoneによる水蒸気の輸送量は減少し,日本列島の南方から,直接豪雨帯に向うSE-風による, transversalな水蒸気流束がいちじるしく増大し,その収束が,豪雨域内の主な水蒸気sinkとなる.(6)豪雨期間,降雨の水蒸気sourceは,太平洋高気圧によっておおわれている,雲のない亜熱帯海域であることが結論される.