著者
秋山 虔
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.49-57, 1986-02-10 (Released:2017-08-01)

『源氏物語』「螢」巻の物語論は、光源氏と玉鬘との対話の過程において、物語についての通念を百八十度逆転させ、物語こそ人間の歴史を過不足なく構築するものであると主張する。この主張には律令政府の伝統的価値規範にもとづく一定の公的立場から書かれた官撰国史の権威をも一蹴する気概を感取しうるが、ここに展開される虚構の理論は、とりもなおさず『源氏物語』の作者による『源氏物語』創作の方法についての自注と解することができよう。そうした視点から、最近ことに重視されている准拠・引用(引詩・引歌)等の問題をあらためて爼上にのぼせ、『源氏物語』のまさに現代史として屹立する達成であることを明らかにしたい。
著者
秋山 虔
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.49-57, 1986

『源氏物語』「螢」巻の物語論は、光源氏と玉鬘との対話の過程において、物語についての通念を百八十度逆転させ、物語こそ人間の歴史を過不足なく構築するものであると主張する。この主張には律令政府の伝統的価値規範にもとづく一定の公的立場から書かれた官撰国史の権威をも一蹴する気概を感取しうるが、ここに展開される虚構の理論は、とりもなおさず『源氏物語』の作者による『源氏物語』創作の方法についての自注と解することができよう。そうした視点から、最近ことに重視されている准拠・引用(引詩・引歌)等の問題をあらためて爼上にのぼせ、『源氏物語』のまさに現代史として屹立する達成であることを明らかにしたい。