著者
秋山 道広 初田 隆
出版者
大学美術教育学会
雑誌
美術教育学研究 (ISSN:24332038)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.25-32, 2018 (Released:2019-03-31)
参考文献数
9

本研究では,図画工作科における,子ども・教師・保護者間での児童絵画に対する見方(評価)の共通性や差異性に着目し,調査を基に比較検討することによって,今日の絵画教育の問題点や課題の鮮明化を試みた。結果,教師と保護者の見方(評価)には強い相関性が確認された。1年生では子どもと保護者・教師との相関性は低く,3年生から6年生になるに従い一定の相関性が認められるようになっていく。教師と保護者が写実を基礎とした絵画の価値方向を子どもに示すことで,次第に子どもの価値意識が教師・保護者の共有する児童画イメージに接近してゆくという関係性が認められた。また,得手不得手の判断基準を,写実的・再現的な絵画の評価観に置く教師の中には,絵画指導に対して苦手意識を持つものも多く,それらを補完するために定型的な指導がなされている可能性が示唆された。