著者
初田 隆
出版者
美術科教育学会
雑誌
美術教育学 : 美術科教育学会誌 (ISSN:0917771X)
巻号頁・発行日
no.27, pp.337-349, 2006-03-31

棒人間を描くことによって人体表現と向き合うことを避ける子どもが年々増えている。棒人間という記号を意図的に操作し,利便性やかわいらしさを見出す傾向も認められるが,特に小学校低学年では抑圧された表現欲求や人とのかかわりの希薄さなどが窺える。本稿では大学生及び教員を対象としたアンケート調査,児童・生徒・学生の作品分析を通し,今日の子どもたちの描画発達の特徴と美術教育の課題を捉えようとした。考察の内容は次の通りである。(1)棒人間表現が近年増加傾向にあること。(2)棒人間表現の発生が低年齢化していること。また,棒人間が継続的に使用されていること。(3)棒人間を描く理由と使用場面。(4)現代における棒人間表現の意味と特徴。(5)棒人間表現の背景。
著者
吉田 賢彦 初田 隆 寺元 幸仁
出版者
美術科教育学会
雑誌
美術教育学:美術科教育学会誌 (ISSN:0917771X)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.445-459, 2015-03-20 (Released:2017-06-12)

これまでの児童画コンクールの是非をめぐる論議においては,子どもが入選作品をどのように捉えているのかといった,子どもの視点にたった考察が欠けているのではないかと思われる。そこで本稿では,コンクール入選作品を刺激対象として,これらを子どもと教師がどのように評価するのか,また,コンクールの入選作品であるという事実認識が作品の価値判断にどういった影響を及ぼすのかを調査・考察した。結果,子どもと教師の作品評価の枠組みや,標準的な作品イメージを基にコンクール作品の評価を行っていること,子どもの評価枠組みは教師の評価に影響を受けていることなどを示すことができた。
著者
津野田 晃大 初田 隆
出版者
大学美術教育学会
雑誌
美術教育学研究 (ISSN:09115722)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.273-280, 2016 (Released:2017-03-31)
参考文献数
8

本研究では「古筆」の臨書体験を中心に据えた文字鑑賞プログラムを作成し,試行実践を通して学習効果の検証及び意義の確認を行うものである。古筆には原初的な手書き文字の持つリズムや気韻が秘められており,手書き文字の美しさを歴史的な視座から感じ取ることができる教材である。また学習者の意識変容を促すために,単に文字を観るだけではなく多感覚を統合させる多面的なアプローチを取り入れたプログラム構成を行った。ワークショップの受講者は教員養成大学の学生・院生とし,文字に対する意識の変容とともに将来の教員としての視座形成がいかに図れたかを考察した。受講者の活動状況やプレ・ポストテストの記述内容からは文字を芸術として鑑賞対象と捉える視座の獲得と,文字意識の深化・拡張,教材化への志向を確認することができ,今後の実践に向けた展望を得ることができた。
著者
初田 隆 吉田 和代
出版者
美術科教育学会
雑誌
美術教育学 : 美術科教育学会誌 (ISSN:0917771X)
巻号頁・発行日
no.33, pp.359-373, 2012-03-25

胎内あるいは出生時の記憶を描写した絵(「胎内記憶画」とする)では,光や音,水,へその緒,包まれている様子などが,ジグザグ線や二重円,マンダラ型などの描画パターンで表現されており,それらは,母子にとって意味のあるシンボルだと思われる。そこで,幼児の表現活動を活性化させるとともに,望ましい母子関係への気づきを促すために,「胎内記憶画」を描く活動が有効なのではないかと考えた。本論では,ワークショップ「ママのおなかにいた頃を思い出そう-絆のドローイング-胎内記憶」の実践及び胎内記憶画の分析を通し,以下の点を明らかにした。(1)胎内記憶に関する子どもの発話を,「五感」,「感情」,「姿勢や動き」の3つに分類し,それぞれに対応する描画パターンやシンボルを確認するとともに,胎内記憶画の解釈を行った。(2)母子ワークショップにおいて「胎内記憶画」を用いることによって,幼児の表現活動を活性化させるとともに,母子の絆を深めるといった効果が確認できた。
著者
秋山 道広 初田 隆
出版者
大学美術教育学会
雑誌
美術教育学研究 (ISSN:24332038)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.25-32, 2018 (Released:2019-03-31)
参考文献数
9

本研究では,図画工作科における,子ども・教師・保護者間での児童絵画に対する見方(評価)の共通性や差異性に着目し,調査を基に比較検討することによって,今日の絵画教育の問題点や課題の鮮明化を試みた。結果,教師と保護者の見方(評価)には強い相関性が確認された。1年生では子どもと保護者・教師との相関性は低く,3年生から6年生になるに従い一定の相関性が認められるようになっていく。教師と保護者が写実を基礎とした絵画の価値方向を子どもに示すことで,次第に子どもの価値意識が教師・保護者の共有する児童画イメージに接近してゆくという関係性が認められた。また,得手不得手の判断基準を,写実的・再現的な絵画の評価観に置く教師の中には,絵画指導に対して苦手意識を持つものも多く,それらを補完するために定型的な指導がなされている可能性が示唆された。
著者
初田 隆
出版者
美術科教育学会
雑誌
美術教育学:美術科教育学会誌 (ISSN:0917771X)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.321-333, 2007-03-31 (Released:2017-06-12)

「大人のぬり絵」がブームとなっているが,出版されている塗り絵は,絵柄も多岐にわたっている他,脳の活性化や絵手紙,写佛などとつなかった展開も見せている。しかし一方で,子どものぬり絵は児童の創造性を損なうという理由で美術教育の立場からは批判にさらされてきている。では何故現在,大人のぬり絵が支持されているのだろうか。本稿では,大人のぬり絵ブームについて考察するとともに,子どものぬり絵について改めて検討し,今日におけるぬり絵の意味や意義を明らかにする。そしてそのことによって現代の「美術」および「美術教育」を問い直す視点を得ることを目的とする。考察の観点は以下のとおりである。(1)大人のぬり絵を支える層(2)大人のぬり絵の効果(3)子どものぬり絵についての諸見解(4)子どものぬり絵と創造性(5)ぬり絵概念の拡張(6)日本文化とぬり絵
著者
淺海 真弓 初田 隆 磯村 知賢
出版者
大学美術教育学会
雑誌
美術教育学研究 (ISSN:24332038)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.17-24, 2016 (Released:2017-03-31)
参考文献数
9

本研究では,図式期における特徴的な表現形式である「基底線」に着目し,描画と立体表現の比較実験を通して考察した。立体表現における基底線意識の有無を確認するとともに,造形(描画・立体表現)発達上の「基底線」の意味や意義を改めて検討することが目的である。なお,山の稜線に対して垂直方向に木を描くといった「基底線に依存した表現」を手掛かりに,実験結果の分析を行った。結果,立体表現においても基底線もしくは「基底線に準じる規準系」が意識されていることが確認できた。特に図式期の立体表現では,立体を立面図的に捉えることで空間を秩序づけていると考えられる。また,基底線に依存した表現の多くは,原初的な方向判断(既存の形態に対して新たな形態を描き加えるとき,最も明瞭に対立する方向へ向かう)が基底線を基準に発現した結果である可能性が高い。
著者
初田 隆
出版者
美術科教育学会
雑誌
美術教育学:美術科教育学会誌 (ISSN:0917771X)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.321-333, 2007

「大人のぬり絵」がブームとなっているが,出版されている塗り絵は,絵柄も多岐にわたっている他,脳の活性化や絵手紙,写佛などとつなかった展開も見せている。しかし一方で,子どものぬり絵は児童の創造性を損なうという理由で美術教育の立場からは批判にさらされてきている。では何故現在,大人のぬり絵が支持されているのだろうか。本稿では,大人のぬり絵ブームについて考察するとともに,子どものぬり絵について改めて検討し,今日におけるぬり絵の意味や意義を明らかにする。そしてそのことによって現代の「美術」および「美術教育」を問い直す視点を得ることを目的とする。考察の観点は以下のとおりである。(1)大人のぬり絵を支える層(2)大人のぬり絵の効果(3)子どものぬり絵についての諸見解(4)子どものぬり絵と創造性(5)ぬり絵概念の拡張(6)日本文化とぬり絵
著者
黒崎 正三 大間 〓 初田 隆 中村 篤司
出版者
社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.488-491, 1968
被引用文献数
2

塩化ビニルを工業的に製造するさいに,多種類の不純物が副生する。アセチレンと塩化水素を原料とする塩化ビニル製造工程において, 副生する不純物のうち, 塩化ビニルよりも沸点の高い成分を濃縮し, 分取ガスクロマトグラフにより高沸点物を分取した。<BR>この高沸点物のスペクトロメトリー(赤外吸収スペクトル,質量スペクトル)および元素分析,その他物理恒数の測定を行なうとともに,他方,化学定性反応処理(臭素付加反応,重亜硫酸ナトリウム付加反応)した高沸点物の濃縮試料のクロマトグラムおよびガスクロマトグラフより分離溶出する成分の炎色反応から高沸点物を定性的に分類した。それより,推定される物質を合成し,スペクトロメトリーおよびガスクロマトグラフィーにより, 同定確認した結果, 高沸点物質として検出した26 成分のうち, 19 成分を定性することができた。