著者
菊地 武道 秋田 信也 中沢 克江
出版者
千葉県体育学会
雑誌
千葉体育学研究 = Chiba Journal of Physical Education (ISSN:09138137)
巻号頁・発行日
no.8, pp.9-16, 1986-01-31

[研究目的] スポーツの競技力を向上させる要因としては、体カ・技術および戦術などがあげられる。テニスは、その中でも技術の占める割合が多い種目と考えられる。しかし、技術を発揮したり、技術習得の激しい練習に耐えるには、桔礎体力が必要であり、そのヒさらに種目特有の専門的体力も必要である。この様な事から大学テニス部員がテニスの競技力向上を図るため、基礎体力は勿諭のこと、テニスに必要な専門的体力を作り、その向上をも併せ図る事は意味のある事である。テニスプレイヤーの体力的特色は、庭球協会のデ杯選手の体力測定報告によれば心肺機能、反応時間および利き手の握力に優れている。一方パワーや柔軟性の能力に欠けていると言っている。テニスの試合形態は、今でこそタイブレイクで試合の決着をつけるようになった。しかし、3セットや5セットマッチと試合は長い時間を要する事から、テニスフレイヤーが全身持久性の能力に優れている事は理解できよう。また、反応時間については、黒田らがミュンヘンオリンピック日本代表選手の全身反応時間は、365.59msecであると言っている。これに比較してデ杯選手は296.94msecと他のスポーツ種目の選手よりも速く、テニスプレイヤーの体力資質として反応時間にも優れているものと推察できる。現在は、ハードコートのサーフェイスが多くなったこと、それにも増して技術的な進歩によりプレースメントよりもハードヒットする打法が主流を占め無酸索的パワーの要素、すなわち力強く、しかも速い動きが必要となってきた。さらに激しい動きの中においてボールを打つためには、その動きを一瞬静止させ、身体のバランスをとることが打球時の動作の中でより必要となってくる。本研究は、テニスプレイヤーの体力的特徴を知り競技力向上の指針を得るとともに、体力的特徴である反応時間およびプレー自体から判断して速い動きの中での身体のバランスも必要と考え、そのための指標となる緩衝性能力がテニスの練習をおこなうことによりどの様に変化するか、その推移からテニスプレイヤーの体力的特徴を併せ考察するものである。