著者
秋葉 弘哉 飯田 幸裕 北村 能寛
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

内容 本研究は、通貨危機後の為替レート制度としては、一国の経済厚生から見てどのような制度が「最適」であるかを理論的に分析した研究である。通貨危機が固定制と変動制の間の中間的な制度を採用していた国々に発生した事実を受けて、いわゆる二極化が起こると言われたが、Fear of Floating(変動に対する恐れ)とFear of Pegging(固定に対する恐れ)も指摘され、最適な為替レート制度の選択は難しいことを念頭に置いて、モデル分析を試みた。モデルではde factoとde jureの制度を峻別し、それらの組み合わせも考慮した厚生の比較を行った。意義 モデルは変動性を考慮するために、必然的に3国モデルになる。厚生面から接近するために、小国の損失関数を大国の損失関数と類似のものと仮定し、失業とインフレからの損失を政府・中央銀行が最小化するようなモデルを構築し、変動レート制度、固定レート制度、中間的制度の3つの制度下の厚生水準を比較検討した。中間的な制度における政府の為替介入をいかにモデル化するかに腐心した。重要性 構築したモデルに基づいた分析から、以下のようないくつかの重要な結論が導出された。(1)変動レート制は中間的制度よりも厚生上優位にある。(2)de factoの中間的制度では、de jureの中間的制度の厚生が、de jureの変動制よりも高いことがある。(3)de factoおよびde jureの中間的制度と固定レート制の厚生では、中間的制度の厚生水準の方が高い。(4)de factoおよびde jureの変動制と固定制の厚生では、変動レート制の方が高い。(5)de jureの変動制でも、de factoで変動制の方が、de factoで中間敵な制度のときよりも厚生水準は高い。(6)de factoとde jureの固定制と、de jureで変動制でありde factoで中間敵な制度では、後者の制度の厚生水準の方が高い。その他いくつかの結論が得られた。