著者
秋間 雄太 川久保 秀敏 柳井 啓司
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J94-D, no.8, pp.1248-1259, 2011-08-01

近年,Folksonomyの出現により,データベースにタグなどによって意味的な価値を付与することが進められてきたが,階層構造のような概念間の関係を組み込んでいるデータベースは少ない.そこで,本研究では,意味的な階層構造を考慮した画像データベースの作成方法を提案する.階層構造の構築方法は,大量の画像データの各概念のノイズを除去した後に,各概念を視覚特徴を用いたベクトル表現,タグを用いたベクトル表現,視覚特徴とタグを統合したベクトル表現の3種類のベクトル表現で,JSダイバージェンスによる距離尺度を用いて概念間の距離関係を推定し,更に概念エントロピーを作成することで,概念の広がりから上下関係を推測する.最終的には,作成した階層構造を,視覚的な特徴のみで作成した場合とタグ特徴のみで作成した場合,そしてタグと視覚特徴を結合した場合での表現結果を考察した.結果として,視覚特徴での階層構造,タグ情報による階層構造のそれぞれにおいて特有の階層構造を確認することができ,また,統合した階層構造は両方の階層構造を加味し,それぞれの特徴を内包した新しい階層構造を作り出すことに成功した.構築された階層構造には人手での発見が難しい概念間の関係が含まれ,画像検索へ役立つ可能性を示す.