著者
原田 小夜 種本 香
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.65, no.10, pp.575-588, 2018-10-15 (Released:2018-10-31)
参考文献数
29

目的 地域ケア会議は地域包括ケアの推進に重要な役割を担っている。本研究目的は,地域包括支援センター(地域包括)職員の地域ケア会議の企画運営の課題と運営における工夫を明らかにし,保険者の効果的な地域ケア会議の企画運営を推進することである。方法 地域ケア会議を運営している職員30人(1グループ5~9人),委託地域包括職員3グループと保険者職員1グループに「地域ケア会議の進め方,困ったことや課題に思ったこと,効果のあったこと」をテーマにグループインタビューを実施し,質的帰納的に分析した。グループごとに,逐語録を作成し,コード化し,サブカテゴリを抽出した。その後,4グループのサブカテゴリを比較,内容の共通性から,中位カテゴリを抽出し,その共通性からカテゴリを抽出し,カテゴリを比較し,その共通性からコアカテゴリを抽出した。サブカテゴリを比較して中位カテゴリに統合する段階で,すべてのグループで共通するものか,グループにより異なるものかを比較した。 結果 4グループインタビューの結果,454コード,91サブカテゴリ,29中位カテゴリ,11カテゴリ,4コアカテゴリを抽出した。地域ケア会議の企画運営における課題は,【地域ケア会議の位置づけ・目標設定に対する迷い】,【会議運営のスキル不足に伴う負担感】,【地域包括の介護支援専門員(以下,CM)や住民を巻き込んだ地域づくりへの足踏み】の相互に関連する3コアカテゴリを抽出した。課題を解決するための工夫として,【効果的な会議にするための工夫によって得られた効果の実感】の1コアカテゴリを抽出した。【効果的な会議にするための工夫によって得られた効果の実感】は,地域ケア会議の構造化と経験の蓄積によるスキル強化とCMの地域ケア推進力の育成,地域ケア会議を住民と一緒に活動するきっかけと捉えるという地域包括職員の地域ケア会議に関する認識の変化であった。結論 地域ケア会議の効果的な企画運営には,保険者の地域ケア会議の目的の明確化と体系化,地域包括職員のファシリテート能力の向上が必要であり,また,保険者による委託包括への支援,CM研修とともに,保険者の地域ケア会議結果と関連するデータの収集,分析から政策化に向けた保険者機能の強化が必要である。