著者
稲井 眞彌 三木 哲郎 森山 剛
出版者
大阪医科大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1986

C9完全欠損症はわが国では高頻度で日本全国で発見されることが明らかになっている. このC9欠損症のC9遺伝子は健常者のC9遺伝子に比較してどのような異常が存在するのかを検討した.1.C9完全欠損症15例より採血した血液から末梢白血球を分離し, これらの症例の白血球より高分子DNAを調整した. 一部の症例の白血球は, EBウィルスで株化することにより, 貴重なDNA材料を持続的に利用できる体制を整えた.2.個々の症例から得られた高分子DNAをEcoRI, BglII, HindIII, PstI, BamHIなどの制限酵素で処理し, アガロース・ゲル電気泳動により切断フラグメントを分離した. これらDNA断片をサザン・ブロティング法により, ナイロン・メンブレンに転写した. このフィルターとアイソトープで標識したC9cDNAとをハイブリダイズさせ, オートラジオグラフィーによりプローブと相補的な塩基配列をもつDNA断片を検出し, DNA断片の長さの多型性(RFLPs法)を検討した. その結果, C9欠損症のC9の構造遺伝子には健常者のそれと差異を認めず, 構造遺伝子内には大きな塩素の脱落などは生じていないと考えられる結果が得られた.3.C9に対するモノクロナール抗体を作製し, C9aを認識する抗体はX195をはじめ14クローン, またC9bを認識する抗体がX197とP40の2クローン得られた. さらにX197はC9をトリプシン分解して得られるC9a', C9b'のうちC9b'を認識したが, P40はC9a', C9b'のいずれとも反応しなかった. このような抗C9モノクロナール抗体は酵素免疫測定法によるC9の蛋白の微量定量法の開発に応用することができる.