- 著者
-
稲垣 千文
青木 萩子
鈴木 力
- 出版者
- 一般社団法人 日本がん看護学会
- 雑誌
- 日本がん看護学会誌 (ISSN:09146423)
- 巻号頁・発行日
- vol.29, no.3, pp.51-60, 2015-12-25 (Released:2016-03-31)
- 参考文献数
- 18
- 被引用文献数
-
2
要 旨 研究の目的は,前立腺全摘除術を受けた既婚男性の治療に伴う気持ちの変化を明らかにすることである.Modified Grounded Theory Approach(M―GTA)に沿い,研究対象者8 名よりデータ収集し分析した.結果,彼らは診断より【どうすればいいか分からない】と衝撃を受けるが,病気の特徴を知ることなどにより,【自分の病気はたいしたことない】安堵の気持ちに至り,【じっくり治療法を選びたい】【前立腺全摘除術を受けたい】へ変化した.治療選択では,【男ゆえに尿漏れは避けたい】と【性機能は諦めたくない】の気持ちが影響し【他の治療法を考えたい】に至った.【性機能は諦めたくない】は【性機能障害は仕方がない】へ変化し,【自分だけじゃない】気持ちとともに,【前立腺全摘除術を受けたい】へ気持ちが変化する際に影響を与えた.そして,術前の【男ゆえに尿漏れは避けたい】は,術後には【尿漏れをなんとかしたい】から,【尿漏れは苦にならない】へ変化し,妻に援助を求める気持ちも含まれていた.対照的に,妻と話し合うことを避けたいとする【性機能障害はあえて触れない】気持ちは持続した.また,術前に【性機能は諦めたくない】【性機能障害は仕方がない】【性機能障害はこだわらない】の気持ちをもち,術前の【性機能は諦めたくない】と【性機能障害は仕方がない】は術後【失った性機能は惜しい】へ変化した.明らかになった気持ちの変化より,彼らへの病気の特徴の理解を促進する援助と尿漏れを理解し対策がたてられる援助が,看護への示唆となった.