著者
稲城 玲子
出版者
大阪大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1995

ヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)は、突発性発疹の原因ウイルスで、発熱、発疹に加え、時に肝機能障害をも引き起こすことが知られている。しかし、その機序はいまだ不明な点が多い。そこで、今回我々はHHV-6感染によって生じる肝障害の機序を明らかにする目的で 1)HHV-6がヒト肝細胞を感染しうるか否か、2)HHV-6感染によって局所免疫を担う肝細胞の機能に変化が生じるか否かを検討した。まず、ヒト肝細胞株(HepG2)にHHV-6(HST株)を感染させ、それら細胞を経時的に採取し、抗HHV-6抗体を用いた間接蛍光抗体法にてウイルス感染細胞の検出を行ったところHHV-6は、HepG2に感染しうることが明らかとなった。次にHHV-6感染がHepG2の担う炎症系サイトカイン産生能にいかなる影響を及ぼすかを検討するため、HHV-6感染HepG2におけるIL-Iβ、IL-RNA発現量を半定量RT-PCRにて解析した。結果IL-IβmRNAの、発現はHHV-6感染によって変動しないのに対し、IL-8mRNA量はHHV-6感染にて有意に上昇した。またこの現象は熱処理やUV処理したHHV-6では認められないことも明らかとなった。以上のことからHHV-6は直接肝臓に感染し、局所での炎症系サイトカイン産生に影響を及ぼし、肝臓での炎症反応を誘導する可能性が示唆された。