著者
稲場 彩夏 愛甲 哲也
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース 第127回日本森林学会大会
巻号頁・発行日
pp.791, 2016-07-08 (Released:2016-07-19)

野生動物への給餌が希少な種の保全策として行われる一方で,無秩序な餌付けによる人と野生動物の関係への悪影響も懸念されている。条例によって餌付けを禁止する自治体も増えつつあり、実態や市民意識の把握が必要である。本研究では、立地と背景の異なる自然公園と都市近郊林で,餌付けの実態と市民意識を明らかにし,その相違と今後の課題を考察する。 札幌市円山公園では,定期的に餌付けの実態を現地踏査し,6月と10月には意識調査用紙1,000部を配布し、549部の回答を得た(有効回答率54.9%)。知床国立公園では,7月と9月に計1,208部を配布し、492部の回答を得た(有効回答率40.7%)。 円山公園では,頻繁にリスや野鳥への餌付けが確認された。意識調査では,人と動物との距離は離れる程望ましく,餌付けへの対策を望む意見が多かった。餌付けへの態度で回答者を分類すると,餌付けに寛容な集団がおり,より近い距離を望み、他の回答者よりも餌付けへの対策を望む意見が少なかった。 今後、餌付けに何らかの対策を取る場合、餌付けに対し寛容なグループへの情報提供や教育の方法などを慎重に考慮する必要があると考えられた。