著者
森 由利亜 稲畑 耕一郎 稲葉 明子
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究は、中国西南部に存在するシャーマニズム(巫教)が中国の様々な宗教的伝統と密接な関係を保ちつつ共存する様が観察される中国西南部について、現地に大量に存在する文献資料に注目し、とりわけ道教との関連を重視しつつ追及するものである。研究成果報告書は、2004年夏の道真県河口郷梅江村張芳頤壇門の地府道場と、河口郷三〓村の楊海安壇門の衝儺活動の現地調査並びに聞取り調査の成果を中心に編集した。前者の地府道場では、壇門の構成や成員などの状況に加え、清微派の法事内容を確認し、具体的に"三天喪葬"法事の次第を一つ一つ確認した。後者の衝儺活動では、8月19,20日に河口郷に赴いて実際に衝儺活動に参加し、複数のデジタルデバイスで儀式を立体的に記録した上で、その後二日をかけて壇門の基本情報と衝儺活動式次第の内容の聞取り調査を行った。この調査を通じて、私たちは現地の研究者と協力しながら、いかにして儀礼の全体を記録し、いかにして当地の職能者とのインタヴューを行うかについての基本的な方法を確立することを得た。しかしながら、今回記録した儀礼の内部構造は、多様な文脈を有する多くの要素を内包しており、それらの分間yくの摘出には本調査は及んでいない。今後は、職能者とのインタヴューを重ねてこれらの儀礼の文脈を明らかにすることを試みたい。