著者
稲葉 あや香
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.e11-e15, 2022 (Released:2022-04-04)
参考文献数
20

本稿は日系カナダ人財産没収を主題とする「不正義の景観(LoI)」アーカイブを事例に、デジタルアーカイブが日系カナダ人の想起に与える影響を考察する。LoIアーカイブは学術資料、日系カナダ人の集合的記憶、家族の記憶という3つの側面を持つ。日系カナダ人ユーザーが書いた記事の分析から、ユーザーにとってLoIの資料が家族史として重要である事が示された。ユーザーは感情に着目することで、財産没収が持つ行政の不正義と家族の過去という側面を、共に個別的な家族の記憶として理解する。このような理解は、より大きな集団の物語と個別的な記憶を競合なく並存させることができるデジタルアーカイブの表現の可能性を示唆している。
著者
稲葉 あや香
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.105-108, 2020 (Released:2020-04-25)
参考文献数
4

本発表では日系カナダ人の歴史保存プロジェクト「Landscapes of Injustice(以下、LOI)」の取り組みを紹介し、エスニック・コミュニティの歴史保存にデジタルアーカイブが果たす役割を考察する。ブリティッシュ・コロンビア州在住の日系人と大学教員との協働で運営されるLOIは、公文書や法務書類の収集とデジタル化を通して、戦時中の日系人財産強制売却の実態を伝えることを目的とする。報告者は2019年11月にLOI製作陣を訪問し①資料デジタル化の動機②資料管理の指針③日系人コミュニティとの関わりの3点について聞き取り調査を行った。その結果、LOIのデータベースの目的が、日系人社会や博物館との関わりを通じて学術利用から公的利用へと移り変わったこと、それに伴い日系人への文書提供などコミュニティ志向の活動が生まれたことが明らかになった。