- 著者
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稲葉 英男
森田 慎一
- 出版者
- 一般社団法人日本機械学会
- 雑誌
- 日本機械学會論文集. B編 (ISSN:03875016)
- 巻号頁・発行日
- vol.61, no.585, pp.1841-1848, 1995-05-25
- 被引用文献数
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This work deals with physical properties of a fine capsulated latent heat storage material-water mixture. The fine capsulated material consists of pentadecane (C_<15>H_<32>, melting point of 283.1 K) as the core latent heat storage material and melamine resin as the coating material. The measured results of the physical properties of the test mixture, i. e. , density, latent heat and viscosity, were analyzed for the temperature region of solid and liquid phases of the core latent heat storage material (pentadecane). It was clarified that the additional properties law could be applied to the estimation of density and latent heat of the fine capsulated latent heat storage material. Moreover it was found that the viscosity of the test mixture increased with an increase in concentration of the fine capsulated latent heat storage material. Useful correlation equations of viscosity for the fine capsulated latent heat storage material-water mixture were derived in terms of temperature and concentration.顕熱に潜熱を上乗せすることによる多量の熱搬送が可能な微細潜熱蓄熱材を分散した混合水は、従来の低温水(顕熱)に代わる有効な熱搬送媒体の一つと考えられる水中に微細潜熱蓄熱体を分散混合する方法としては、エマルション化する方法および微細カプセル化混合する方法などが考えられる。エマルション化は、界面活性剤を用いた潜熱体の微細化そして安定分散化により均質混合水を容易に得ることが可能である。しかし、界面活性剤を用いるために高粘性の混合水となり、管内搬送時の圧力損失が大きくなる欠点を有する。固-液潜熱物質を微細カプセル化し、水と分散混合する方法は、均質な混合水をえるためにカプセル化潜熱物質を十分に微細化する必要がある。この微細カプセル化潜熱物質を分散した混合水は、連続相を水のみとすることができるために、圧力損失の増大を抑えることが可能である。この種の潜熱蓄熱材料は、水中にカプセル化された微細な潜熱体が分散している複雑な系を有することから、その物性の測定方法の検討などで困難な問題を伴い、その結果基礎データとしての物性値の評価が十分になされていない現状にある。本研究は、ペンタデカン(C15H32,凝固点Tfp=283.1K)を芯物質としメラミン樹脂をカプセル被覆とする微細カプセル化潜熱物質を水と混合した潜熱蓄熱材料の基礎データとしての密度、潜熱および粘性の測定結果を示すものである。微細なカプセル化潜熱物質混合水の密度および潜熱量の測定は、試料の温度制御が比較的安易な体積計法および示差走査熱量法により行われた。吉田は、直径100μm程度の多核カプセル化潜熱物質混合水の粘性測定を回転粘度計を用いて行い、非ニュートン挙動が示されることを明らかにすると共にべき乗則モデルによる近似を行っている。この種の混合水の粘性は、一般に非ニュートン挙動を示すことが知られている。本研究にいける粘性測定は、せん断速度を変化可能な回転粘度計を用いて行われた。物性値測定は、芯物質の固-液相変化を伴う温度範囲(T=273.1~298.1K)、そして微細カプセル化潜熱物質の質量割合Cca=10.2~40.8mass%の範囲において行われた。物性値測定の結果は、この種の潜熱蓄冷材料を用いた蓄冷システムの伝熱および流動特性予測に役立つ基礎資料を提供するものと思われる。