著者
黒河内 宏昌 稲蔭 博子 池内 克史 吉村 作治
出版者
東日本国際大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は、エジプト・ギザ遺跡のクフ王ピラミッド足元のピットに解体して埋納されている、今から約4600年前の世界最古の木造船「クフ王第2の船(仮称)」(紀元前2600年ころ)の復原考察を行うことを目的としている。「第2の船」は鉄の無い時代に造られた後世とはまったく異なる構造を持つ船であり、当初は約40メートルの長さを持っていたと思われる大型木造構造船である。またピット内に保管されていたため、部材が100%残存しており、人類の木造構造物の歴史上極めて貴重な遺構である。本研究の方法は次のとおりである。A.まずギザ遺跡の現場において部材をピットから取り上げ、保存修復する。B.次に部材をマニュアル測量し図面とスタディ模型を用いて復原考察を行う。C.また一方で部材を三次元測量し、専用のシステムを開発してコンピューター内で組み立て復原のシミュレーションを行い、B.の結果と比較考察する。D.復原像を表現する方法を研究し、CG、イラスト、模型などで実際に表現する。ギザ遺跡のクフ王の船は2つのピットにそれぞれ1隻ずつ、合計2隻埋納されており、「第1の船(仮称)」はすでにエジプト考古省によって1980年代までに取り上げ、組み立て復原を終えている。我々の対象となる「第2の船」の部材総数は、その「第1の船」と同様であると考えると約1200点と推測される。現場では甲板室や甲板など船の上部構造に属する部材の諸作業を2016年度までに終了し、2017年度からは船の下部構造すなわち船体を構成する大型部材の取り上げを開始した。しかしピット内の保存環境が劣悪であったため、「第2の船」の部材は予想以上に劣化しており、大型部材の取り上げと保存修復、測量の作業のためには、専用の設備を新たに製作し、極めて慎重に行わなくてはならなかった。